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2008年8月12日 (火)

「1600年体制」からの脱却

「天下り」はそもそも神が天界から地上に下ることを指す「神道」の用語だ。しかし、現世の「天下り」で「天下る」のは人間である。神を冒涜した考えだ。だが、人間であるのに「天下る」と表現する点に、問題の本質が示されている。

WIKIPEDIAには誤りが多く、信頼できないが、官僚が職務時間中にWIKIPEDIAを編集していたことも明らかにされている。「天下り」に関しても、当然、官僚が編集に携わっていると思われる。

以下、WIKIPEDIAの記述をもとに「天下り」について考えてみよう。

WIKIPEDIAには用語解説の体裁を装いながら「天下り」を正当化する「論理」が散りばめられている。

WIKIPEDIAは「天下り」を

「退職した高級官僚が、関連する民間企業や独立行政法人・国立大学法人・特殊法人・公社・公団・団体などの高い職に就く(迎えられる)事を指して批判的に用いられる」

と定義している。

「天下り」の原因については、

「キャリア官僚の早期勧奨退職慣行が大きな背景になっている」

とする。

「国家I種試験を経て幹部候補生として採用されたキャリア官僚は、程度の差こそあれ、同期入省者はほぼ横並びに昇進していく。その過程でポストに就くことができなかった者が退職していく仕組みが早期勧奨退職慣行と呼ばれる」

「一般に事務方のトップである事務次官は1名であるから、同期入省者または後年入省者から事務次官(または次官級ポスト)が出ると、その他の同期入省者は全て退職することになる」

「この仕組みの元では、60歳の定年を待たずに退職するものが多いため、その後の職業を用意するために必要とされる」

と記述する。

 また、「天下り」による高額報酬・退職金の受け取りについて、

「キャリア官僚の給与は、同等の学歴等を有する一部上場大企業等の役員・社員と比較すると著しく低く抑えられているのが実情であるが、有能な人材を採用するためには生涯賃金を前述の企業等と少なくとも同程度ないしそれ以上にする必要があるため、天下り先における高給や退職金は官僚の質を維持し続けるためには必要悪であるとの指摘もある」

とし、

「実際に、国家公務員志望者数は減少し続けており、2008年度現在最低記録を更新中であり、東大等の優秀な学生は給与が安く何かと批判・非難の対象とされるキャリア官僚ではなく、遥かに高給が期待できる投資銀行や経営コンサルティング会社や大手渉外法律事務所等を選択する傾向が如実に強まっているという指摘もある」

さらに、

「民間企業の側からも、官庁への人脈作りや情報収集、退職した官僚の持つ技術や見識など、人材を迎え入れるニーズがあることも指摘されている」

などと記述している。

「官僚」による「天下り」を正当化するための「作文」と見なして間違いないだろう。

「天下り」の問題点としては、以下の項目が示される。

①官民の癒着、利権の温床化 

②人材の仲介・斡旋について、中央省庁の権限が恣意的に使用されている。 

③公社・公団の退職・再就職者に対する退職金の重複支払い 

④幹部や首脳になりづらくなることによる生抜き職員のモチベーションの低下 

⑤年間に数日しか出勤せず、また出勤しても業務らしいこともしていないのに、極めて高額の給与が支給される(ポストだけの確保)。 

   

私はかねてより以下の3点を提案してきた。

①公務員に定年までの雇用を保証する。

②第Ⅰ種・第Ⅱ種公務員を統合する。

③以上の前提を満たして「天下り」を全廃する。

公務員が退職後に独自に再就職することは妨げない。しかし、退職直前5年ないし10年間の地位に関係する民間会社への再就職を退職後5年間程度禁止する。

「再就職の禁止は個人の就業の自由および職業選択の自由を不当に制限し、憲法に違反するもので問題がある」(WIKIPEDIA)との反論があるので、完全に自己の力と責任による再就職については規制の対象外とする。ただし、公務員時代の職務に関係する企業への再就職は不正防止の観点から正当化される。

WIKIPEDIAは

「民間企業・特殊法人等からも「官庁を退職した優秀な人材を雇用したい」「官庁に対する必要な情報を得たり、人脈を作りたい」などのニーズがあることから天下り禁止の実施は困難である」

と主張するが、民間企業が官庁の斡旋で「天下り」を受け入れるのは、官庁との関係について、便宜を得るためである。優秀な人材であれば、「天下り」でなく一般採用で企業が雇用すればよい。

「天下り」を受け入れる独立行政法人、公益法人などに国家の財政資金が年間12.6兆円も注ぎ込まれている。「天下り」官僚の報酬、諸経費、退職金に膨大な国費が投入されている。

「天下り」を全面的に廃止すべき理由は以下の五つだ。

①国家財政が窮乏している。社会保障制度を持続可能なものに再構築するためには国民の負担増大も検討しなければならない。そのようななかで、「特権官僚」に対する「特権的」不正支出を国民は容認しない。

②「天下り」が「政官業外電 悪徳のペンタゴン」による癒着が払拭されない重要な原因になっている。

③「天下り」の言葉が象徴する「上下の人間関係」は「法の下の平等」を定めた日本国憲法の精神に反する。国民に残存する「お上と民の精神構造」を払拭しなければならない。

④「優秀な人材が公務員を志望しなくなる」との反論があるが、「第Ⅱ種」試験に合格する程度の能力があれば十分である。政策を立案するのは「政治」の役割だ。「霞が関」が「永田町」を支配することが本末転倒なのだ。

政治家の責任ある決定を着実に実行するのが公務員の役割だ。少数採用で将来の幹部を約束する「第Ⅰ種」制度が「勘違い」官僚を生み出す原因になっている。「勘違い」官僚は自分たちが日本の政策を決定する能力と権限を持っていると「勘違い」している。

一般的な「非第Ⅰ種」公務員が備えている「善良さと勤勉さ」が「公務員」に求められる最も重要な資質だ。政策立案能力に秀でており、社会に貢献したいと考える人材は政治家を志望するべきだ。

⑤「天下り」を受け入れる企業や団体には、生え抜きの職員が多数存在する。それらの企業や団体の幹部には生え抜き職員が就くべきである。「天下り」ポストが各省庁の「利権」になっていることが問題だ。

  

 私は拙著『日本の総決算』Ⅴ「官僚主権構造」に「1600年体制」と記述した。

「官僚機構という公権力が圧倒的な実験を握り、国民がその被支配者であるという構造。国民の側にある自ら従属しようという民としての意識。これらが定着したのは、おそらく江戸時代である。現代の日本の権力構造、そしてその権力構造を支えている精神構造は江戸時代にしっかり定着したものであり、そうした意味で現在の体制は1600年体制と呼んでもよい。」

 テレビドラマ「水戸黄門」は日本の人気テレビドラマのひとつだ。商人に扮する水戸黄門一行が悪代官率いる悪党官吏を切りつけるとクライマックスだ。「葵の御紋」の印籠をかざすと、皆がひれ伏す。「お上」の権威に「下々」がひれ伏すのだ。

 日本国民にまだ「下々」意識が残存しているのではないか。「天下り」を当然と考える「特権官僚」は自らを「お上」と勘違いしているのではないか。

 関東地方の有力地銀頭取ポストは財務省次官経験者の指定席だ。極めて優秀な生え抜きの副頭取を私はよく知っていた。しかし、財務省出身頭取が君臨し、副頭取は銀行を追放された。

 九州地方にも同じような銀行がある。県内の地方銀行と合併し、財務省出身頭取が実権を奪った。銀行は頭取と財務省のつながりを重視して「天下り」人事を受け入れているのだ。

 「国民」が主権者である「新しい日本」を作る第一歩が「天下り」の全面廃止である。自公政権に「天下り」を根絶する意思が存在しないことは間違いない。「天下り」を根絶し「国民主権国家」構築を有権者が望むなら、政権交代を実現しなければならない。

 野党は総選挙のマニフェストに「天下り根絶」を明記しなければならない。政権交代を実現し、「天下り」を根絶して、初めて「新しい日本」の歩みが始まる。

 有権者が「お上と民の精神構造」=「1600年体制」から抜け出せないなら、変化は生じない。「天下り」根絶を明記する野党の行動は不可欠だが、国民が「お上と民の精神構造」から脱却して初めて「真正の改革」が動き出すことを認識しなければならない。

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