13,000円を割り込んだ日経平均株価
日経平均株価が7月15日以来、3週間ぶりに13,000円を割り込んだ。NYダウの下落懸念も強く、NYダウ10,000ドル割れが視界に入る可能性がある。
8月5日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されるが、インフレ・金融不安・景気悪化の三重苦に直面するFRBの政策判断は苦悩に包まれている。米国経済金融の混迷深刻化が警戒される。
講談社名誉毀損損害賠償請求訴訟での勝訴について、ひらのゆきこさんがJANJANニュースに記事を掲載してくださいました。ご高覧くださいますようお願いいたします。
7月17日付記事「FRBインフレ重視方針でNY株価反発」に以下の通り記述した。
「NY株価は15日の10,962ドルを底に、目先反発する可能性が高い。(中略)これまでの際限のないドル安、原油高、株安の連鎖から解き放たれて、株価反発局面を期待することができるが、目先の反発で安心感が広がったのちの再調整圧力を警戒する必要がある。」
私は会員制レポート 『金利・為替・株価特報』2008年6月7日号に日米株価下落見通しを提示した。NYダウが6月6日に節目と見てきた12,500ドルを明確に下回ったことを確認し、株価下落見通しを示した。
NYダウは5月2日の13,058ドルをピークに7月15日の10,962ドルまで2096ドル、16.0%下落した。11,000ドルを割り込んだのは2006年7月21日以来2年ぶりである。
日経平均株価は6月6日の14,489円をピークに7月15日の12,754円まで1735円、12.0%下落した。
原油価格が1バレル=145ドルまで上昇し、インフレ懸念が広がり、米国金融政策の方向転換が予想され、株価が調整局面を迎える可能性が高いと判断した。
7月16日の議会証言で、バーナンキFRB議長が「インフレ抑制を最優先課題に位置付ける」ことを明言した。バーナンキ発言を契機に日米株価が反発した。
7月17日付記事では、バーナンキ発言を好感して日米株価が反発すると予測したが、同時に利上げ実施までには紆余曲折も予想されることから、「目先の反発で安心感が広がったのちの再調整圧力を警戒する必要がある」と記述した。
NYダウは7月23日には11,632ドルまで、7月15日の10,962ドルから670ドル、6.1%上昇した。その後、7月28日に11,131ドルまで反落したのち、7月30日には11,583ドルまで上昇した。しかし、7月23日の11,632ドルには到達せずに8月1日には11,326ドルまで再下落した。
日経平均株価はNYダウが7月16日以降反発したのに連動して反発し、7月24日には13,603円まで、7月15日の12,754円から849円、6.7%上昇した。しかし、その後、NY株価に連動して反落し、8月4日には12,933円まで下落し、7月15日以来、3週間ぶりに13,000円を割り込んだ。
日米株価の下落傾向持続に十分警戒が求められる。詳細は『金利・為替・株価特報』2008年8月8日号に記述するが、NYダウは10,000ドルの大台割れが視界に入る可能性がある。日経平均株価も7月15日安値を割り込み、3月17日安値を下回る可能性があると考える。
7月31日発表の2008年4-6月期米国実質GDP成長率は前期比年率1.9%のプラス成長を記録した。2008年1-3月期も前期比年率0.9%のプラス成長を記録した。
2四半期連続のマイナス成長が「リセッション」の定義とされており、米国経済は2008年前半には「リセッション」に突入しなかった。
しかし、8月1日発表の7月雇用統計では非農業部門雇用者数が5.1万人減少し、7ヵ月連続の雇用者数減少が記録された。失業率も5.7%と4年ぶりの高水準を記録した。
米国は「景気悪化」、「金融不安」、「インフレ懸念」の三つの問題に直面している。FRBおよび米国政府は「金融不安」リスクをもっとも強く警戒し、政府支援住宅公社(GSE)に対する資本強化策を決めるとともに、超低金利政策を実施している。
しかし、超低金利政策が「インフレ懸念」と「ドル不安」をもたらしている。8月5日のFOMCでは、利上げ政策をめぐって激論が交わされる可能性が高い。原油価格が反落したことから、金利据え置きの可能性が高まっているが、利上げ実施の主張も根強い。
当面の米国株式市場最大の懸念はGMの経営不安定化である。地銀が相次いで破たんし、5兆ドルのローンおよび保証債券を抱えるGSEの経営不安も表面化している。米国株式市場は地雷原と化しつつある。
インフレ抑制のために短期金利の引き上げが必要と考えられるが、金融不安回避が絶対条件であり、金利水準の調整を完了するのにかなりの時間が必要になっていると考えられる。
日本の株価に割高感はないが、日本の株価は米国株価との強い連動性を有しており、米国株価調整が拡大する場合、日本株価も連動して下落する可能性が高い。
また、日本経済自身が景気後退局面に移行している可能性が濃厚だ。8月2日に改造内閣を発足させた福田政権は景気対策を盆前にも策定する見通しだ。
福田首相は「政策総動員」の掛け声を示したが、財務省基軸の新体制下で、景気悪化を遮断する抜本策が提示される可能性は現状では高くない。
また、超低金利を維持する日銀の金融政策がインフレを促進することも予想され、インフレと景気後退の同時進行という「スタグフレーション」シナリオが、日本でも現実化しつつある。
中国でもオリンピック後の経済調整深刻化が懸念されており、日本経済を取り巻く情勢が急激に悪化している。
総選挙が迫っているため、自公政権が突然「理念なきバラマキ政策」の方向に舵を切る可能性もゼロとは言い切れない。福田改造内閣の政策対応を注視しなければならない。
« 「NHK日曜討論」町村官房長官発言の誤り | トップページ | 福田改造内閣の「偽装3兄弟」新政策 »
「内外経済金融情勢」カテゴリの記事
- 完全に予測されていた米ドルの全面安(2009.11.27)
- 依然として不安定な内外経済金融情勢(2009.07.08)
- 深刻化するマンション不況と政府の責任(2008.08.27)
- 内外株式市場に変化の兆候(2008.08.18)
- 「感無景気」からの景気後退(2008.08.13)