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2008年8月13日 (水)

「感無景気」からの景気後退

日本経済の逆風が強まっている。2008年4-6月期のGDP速報が発表された。4-6月期の実質GDP前期比年率成長率は-2.4%になった。日本経済のマイナス成長は2007年4-6月期以来1年ぶりだ。

2002年1月に底を打ち、2007年12月まで上昇を続けたとされる日本経済。景気回復の期間では戦後最長とされるが景気拡大、景気回復の実感はまるでない。

過去最長の景気拡大は「いざなぎ景気」(1965年10月-1970年7月)の57ヵ月で、今回の景気回復が2002年1月から2006年12月とすると71ヵ月となり、期間のうえでは戦後最長ということになる。

朝日川柳に

「いざなぎは神話なのだと言いきかせ」

「おざなりと命名したいこの景気」

とあった。また、住友生命募集創作四字熟語には、

「感無景気」

とあった。

2002年から2007年の日本経済の実質成長率は年平均1.8%で、米国の2.6%を大幅に下回っている。この期間の名目成長率は年平均0.6%だった。米国の年平均5.3%成長の10分の1程度の伸び率だった。ほぼゼロ成長だったわけで、「感無景気」の命名は的確だ。

今日発表されたGDP統計は日本経済の深刻な現状を如実に示している。

GDP成長率       -2.4%

民間最終消費支出(57.2%) -2.2%

民間企業設備(15.8%)   -0.9%

民間住宅(3.2%)      -13.0%

政府最終消費支出(17.6%)  0.3%

公的固定資本形成(4.1%) -19.3%

輸出           -8.9%

(いずれも前期比年率実質伸び率)

(括弧内は名目GDP構成比)

資源・食料価格の高騰で家計消費が落ち込んでいることが鮮明に示された。住宅投資も大幅減少が続いている。海外経済の減速を映して輸出が大幅に減少したことも影響した。公共事業の大幅減少も際立っている。

2001年に発足した小泉政権は弱肉強食を奨励する市場原理至上主義を経済政策運営の根幹に据えた。2002年から2003年半ばにかけて日本経済は戦後最悪の状況に追い込まれた。

景気循環上、2002年1月が底になっているのは2001年9月に米国で同時多発テロがあり、2002年1月にかけて生産活動が底割れしたからである。しかし、小泉政権の株価暴落誘導政策により日経平均株価は2003年4月末に7607円まで暴落し、日本経済は2003年半ばまで最悪の状況を続けた。

2003年後半から2007年にかけて日本経済は浮上したが、国民生活は改善しなかった。浮上したのは大企業だけである。中小企業の大半は不況から抜け出せぬまま今回の景気後退に見舞われることになった。

小泉政権は大企業の労働コスト削減を全面的に支援した。企業は正規雇用を大幅に削減し、派遣やパートなどの非正規雇用を激増させた。非正規雇用労働者は雇用者全体の3分の1に達している。

まじめに汗水流して働いても年間所得が200万円に届かない低所得労働者が激増した。分配の不公正は小泉政権が格差社会先進国である米国流の「弱肉強食社会」を意図して目指したことによって拡大した。

竹中平蔵氏が主張し続けた「がんばった人が報われる社会」とは、ホリエモンのような人物が賞賛される社会を意味し、その陰で多くの善良な若者の生存権が脅かされるような労働慣行を奨励する社会だった。

家計所得が伸び悩むなかで物価上昇も生活を直撃している。6月の全国消費者物価指数は前年同月比1.9%上昇した。1998年1月以来、10年5ヵ月ぶりの高い上昇率になった。消費税増税の影響を除くと1992年12月以来、15年6ヵ月ぶりの高い上昇率である。

他方で各種社会保険料が引き上げられ、高齢者、障害者、母子世帯いじめの政策が強行実施されてきた。小泉政権以来の自公政権が一般国民の不幸を誘導してきた事実に私たちはしっかりと目を向けなければならない。

本当の意味での「がんばった人が報われる社会」を実現するには、「分配に関する政策」を刷新しなければならない。雇用形態の変化は世界の大競争進展を踏まえれば避けて通れない面がある。「年功制」、「終身雇用」が「実績給」、「雇用流動化」に変化することは避けられない側面がある。

こうした労働市場の変化を踏まえたときに重要性を増すのが、非正規雇用者の権利を正当に保障する政策だ。「同一労働・同一賃金制度」の導入が急務なのだ。欧州では非正規雇用労働者の権利が重視され、さまざまな制度が導入され定着している。

日本では政治屋(政)、特権官僚(官)、大資本(業)が癒着して、一般国民(労働者)を不幸にする制度が急激に強化された。政官業のトライアングルに外国資本(外)、メディア(電)が加わり「悪徳のペンタゴン(5角形)」が形成され、国民の生存権が脅かされてきた。

「政官業外電の癒着構造」の上に位置する自公政権を一般国民が支持することは、自分で自分の首を絞める行為だ。政権交代を実現して一般国民の幸福を追求する政府を樹立しなければならないと思う。

自民党内部に「財政再建派」と「上げ潮派」の意見対立があると伝えられているが、福田政権が内閣改造を実施して以降、新たに「バラマキ派」が力を得て、三つ巴の内紛が生じているとも伝えられる。

しかし、「正しい政策」を提示するグループはまったく存在しない。大きな問題は、①近視眼的な均衡財政至上主義がはびこっていること、②景気支持を訴える勢力が選挙目当ての利益誘導政治に走ること、の2点だ。

「財政再建派」も「上げ潮派」も2001年度の基礎的財政収支黒字化に執着する。これが「近視眼的均衡財政至上主義」である。これらの人々は財政赤字の「循環要因」と「構造要因」の違いと赤字解消の手順を正しく理解していない。

不況局面では「循環的に」財政赤字が拡大する。これを避けようとすると不況が加速し、結果的に財政赤字が拡大する。1997年や2001年の政策失敗がこのことを立証している。

日本経済の悪化を緩和するための財政政策発動が検討されるべきだ。物価上昇が進行し、円が主要通貨に対して暴落してきた経緯を踏まえれば、金融政策に超金融緩和政策をこれ以上強要するべきでない。「上げ潮派」は超低金利政策と法人税減税を主張するが、この点に「上げ潮派」が「大資本」と「外国資本」の利益を代弁している本質が示されている。

財政政策発動を検討するべきなのだが、「バラマキ派」は選挙目当てに「個別補助金」で「大資本」や「特定業界」への利益供与を指向する。漁業関係者に対する燃料費補助もこの手法による。「利権になる景気対策」を指向するのが「バラマキ派」の特徴だ。

財政政策発動は透明性の高い「プログラム政策」で実行するべきなのだ。制度減税、社会保障制度拡充がこの政策の基本手段だ。円高対策に最も適しているのが「ガソリン税暫定税率廃止」だ。自公政権は透明性の高い政策を嫌い、利権を生み出す個別政策を検討している。

米国のサブプライム金融危機は米国金融機関の融資慎重化を招いており、米国の景気調整、資産価格下落、金融不安の悪循環を長期化させる可能性を高めている。米国株価の下方リスクは依然として高い。

財政健全性回復を考察する際には、「循環赤字」と「構造赤字」を明確に区別しなければならない。景気後退局面での「構造赤字」縮小策強行が過去の政策失敗の基本原因だ。日本経済が景気後退に移行した現局面では、不況の深刻化軽減が優先されるべき政策課題になる。

景気を改善させて循環的な赤字を解消する。そのうえで構造赤字縮小に取り組む。これが正当な財政再建の手順だ。2001年から2008年にかけての経済政策により、国民所得の「資本」と「労働」への分配における著しい「資本」への傾斜が進行し、一般国民が不幸になった。

今回の不況への対応策において、一般国民=「労働」への分配を公正な水準に引き上げることを検討するべきだ。労働者の権利を守る制度変革を通じて「分配の歪み」を是正する必要がある。「日本経済の幹」にあたる一般国民を不幸から救出する政策が日本経済を回復させる原動力になることを正しく認識しなければならない。

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