「NHK日曜討論」町村官房長官発言の誤り
「小泉改革」路線を明確に否定するのか。
「国民生活重視」を最優先するのか。
「財政再建目標」を棚上げするのか。
煮え切らない優柔不断の政策姿勢は、福田首相の脳内構造をそのまま反映しているようにうかがわれる。
「霞が関保身内閣」と呼べる福田改造内閣は、「脱小泉」色を鮮明にした。しかし、はっきりと「小泉改革」路線からの訣別を宣言したのかと言えば、「NO」である。「改革の基本路線は継承する」という。
「国民生活重視」を最優先課題に位置付けるなら、「ガソリン税暫定税率」を廃止し、「後期高齢者医療制度」を白紙に戻し、不況に突入した日本経済を回復させることに全精力を注ぐことになる。しかし、その気配は示されていない。
「2011年度に基礎的財政収支を黒字化」することが、財政再建目標とされているが、目標見直しの判断は示されていない。
市場原理至上主義、官僚利権温存、国民生活疲弊、財政再建優先路線に対する国民の批判が高まり、福田首相は政策修正に追われている。
改造内閣では「小泉一派」が排除され、郵政造反組が政権中枢に復帰した。歳出の無駄排除を目的に「無駄ゼロ会議」が設置された。原油高不況に対応して経済対策が策定されることになった。
しかし、すべての要素が混在し、理念と方向が明確でない。政策の方向が明確でなければ、大きな成果を得ることは難しい。
三つの問題点を指摘しておく。
①不況に突入した日本経済の悪化を回避するには、腰の据わった対応が必要だ。伊吹財務相は本日のNHK日曜討論で、「歳入の手当てのない政策発動はありえない」と発言したが、財政バランスに影響を与えない景気支持政策の経済支持効果は極めて限定的である。
財政政策の景気支持効果の大きさは、財政バランスの変化で測られる。財政収支に影響を与えない景気支持政策のマクロ経済への影響は極めて小さい。
②政府の無駄排除政策の最大の対象は「天下り」利権である。「天下り」機関に1年あたり12.6兆円の財政資金が投入されている。国民生活重視の政策を実現するための最大の財源がここに隠されている。
「政府の無駄排除」に向けての福田政権の基本姿勢は「天下り問題」への対応に示されることになる。「無駄ゼロ会議」を何度開こうとも、「天下り」を断ち切らなければ、「ざるのなかに水を蓄える」論議になる。
③弱肉強食奨励、セーフティーネット排除の「小泉改革」路線と明確に訣別するのかが不明確である。高齢者、障害者、非正規雇用者などを中心に、「小泉改革」は国民の生存権を脅かしてきた。
自公政権に対する批判の高まりの最大の要因は、「小泉改革」の新自由主義路線にある。福田首相は内閣改造で「小泉一派」を排除したように見えるが、「小泉改革」路線からの訣別を明言していない。
「偽装CHANGE」勢力が創設され、裏で福田政権と手を組むことも考えられる。
民主党の小沢一郎代表は20年来、「自立と共生」の理念を掲げてきたが、福田首相は昨年の自民党総裁選で「自立と共生」のコピーを掲げた。
民主党は昨年7月の参議院選挙で「国民の生活が第一」の政策方針を明確に掲げて大勝した。福田首相は「国民目線の政治」を掲げ、国民生活の安心、安定をにわかに訴えている。
「国民生活重視」と、小泉政権以来の「大資本」、「外国資本」、「特権官僚」の利益重視の政策とは相容れない。「小泉改革」路線からの訣別を宣言することなく「国民生活重視」を主張しても、選挙目当ての「政策盗用」としか見なされない。
町村官房長官は本日のNHK日曜討論で、「小泉政権は財政出動することなく景気回復を実現した」、「この基本姿勢を維持しなければならない」と述べた。
しかし、これは事実に反する。過去の歴史事実を正確に把握せずに政策を運営していることが、そもそもの誤りだ。
2001年度当初予算では、歳出規模が82.7兆円、国債発行が28.3兆円だった。2001年度は補正予算が2度も編成された。歳出規模は第1次補正で1.1兆円、第2次補正で2.6兆円追加された。税収見積もりは1.1兆円下方修正され、4.8兆円の財源確保が必要になった。
国債発行は見かけ上、30兆円にとどめられたが、実態は補正後で33.1兆円に拡大した。
2002年度は補正予算で5.0兆円の国債発行が追加された。国債発行額は35兆円に達した。
つまり、2001年度も2002年度も約5兆円の追加財源調達を含む補正予算が編成された。小泉政権の超緊縮財政が日本経済の急激な悪化をもたらし、結局、小泉政権は大型補正予算を編成して、経済悪化に対応したのだ。
2003年以降に日本経済が浮上したのは、破綻の危機に直面したりそな銀行を2兆円の公的資金注入により救済したからだ。小泉政権は「自己責任原則」を掲げながら、「自己責任原則」を放棄する「税金による銀行救済」に手を染めた。株主は責任を問われるどころか、政府から巨大な利益を供与された。
小泉政権の金融行政は完全に破綻した。「景気悪化推進の超緊縮財政政策」は「大型補正予算編成」で完全に挫折した。「自己責任原則貫徹の金融行政」は「りそな銀行救済」で破綻した。
税金で銀行を救済すれば株価が猛反発するのは明白だ。2003年以降の不良債権処理進展、経済改善は、株価上昇および連動する地価底入れによってもたらされた。
小泉・竹中経済政策の完全破綻を示す、税金による銀行救済を契機に株価が上昇に転じ、その結果として不良債権減少、経済改善が進行した。これが「歴史の真実」だ。
御用メディアは「小泉竹中政策の破綻」の真実を伝えず、「政策破綻」を「改革政策の成功」に偽装して報道した。廃鶏を「比内鶏」に偽装した企業が詐欺で摘発されたが、偽装された「比内鶏くんせい」が十分食用に耐えられたことを考えれば、「破綻政策」の「改革政策の成功」への偽装よりはずっとましだ。
国民新党の自見庄三郎議員が、本日のNHK討論で福田改造内閣を「消費税地ならし内閣」と称したが、けだし名言である。
財務省を基軸に据えた福田改造内閣は、総選挙後の消費税増税への地ならしを開始した。しかし、総選挙を目前に控えるため、さまざまな「目くらまし」が施される。
「目くらまし」実行は、伊吹財務相が講演で明言しているから間違いのないところだ。
8月にも策定される不況対策もその一つになるだろう。「無駄ゼロ会議」も「目くらまし」の有力な手段と認識されているはずだ。「小泉一派」と「脱藩官僚の会」、「自民別働隊知事グループ」などが連携して「偽装CHANGE」活動を展開するかも知れない。
民主党を中心とする野党は、国民に「偽装」を見破る方法を伝授しなければならない。「大阪のおかん」による「振り込め詐欺防止CM」が作られたそうだが、野党連合で「偽装CHANGE詐欺防止CM」を制作すべきだ。
野党は次期臨時国会、総選挙に向けて、
③「天下り」根絶、
を明確に示す。
同時に、
④「天下り根絶」なくして「消費税増税なし」
を明確に示すべきだ。
「偽装CHANGE」勢力がこれらの施策を「真実の公約」として掲げることはできない。
権力は腐敗する。「政官業外電 悪徳のペンタゴン」による利権政治、腐敗政治は、「自民党長期政権」と「特権官僚」「大資本」、「外国資本」、「マスメディア」の癒着の結果として生じている。
「真正CHANGE」は「政権CHANGE」から始まる。「政権CHANGE」のない「CHANGE」は「偽装CHANGE」だ。
「偽装」が渦巻く現代日本で「偽装」を暴くのは「告発」だ。「偽装」を見抜く人々が勇気をもって「告発」することにより、国民を「偽装」詐欺から守ることができる。
福田政権は、まず不況対策策定で新機軸の真価を問われる。野党は「真正CHANGE」の具体策を明示して、「偽装CHANGE」詐欺撲滅キャンペーンを開始すべきと思う。
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つまり、2001年度も2002年度も約5兆円の追加財源調達を含む補正予算が編成された。小泉政権の超緊縮財政が日本経済の急激な悪化をもたらし、結局、小泉政権は大型補正予算を編成して、経済悪化に対応したのだ。2003年以降に日本経済が浮上したのは、破綻の危機に直面したりそな銀行を2兆円の公的資金注入により救済したからだ。小泉政権は「自己責任原則」を掲げながら、「自己責任原則」を放棄する「税金による銀行救済」に手を染めた。株主は責任を問われるどころか、... [続きを読む]