「決戦の総選挙」必携三箇条
総選挙で与野党が逆転する場合には、公明党が自民党と訣別し民主党に擦り寄ることも視界に入っているのではないかとの憶測も生じている。総選挙と都議会選挙日程を切り離すのは、公明党の行動の自由度を高めるためとも考えられる。
とりあえずは自公政権での乗り切りを模索する。そのためにすべての政策対応を次期総選挙に焦点を合わせて策定する。福田首相はもはや自分の判断でものごとを決することのできない状況に追い込まれている。この実情に照らせば、いっそのこと公明党議員に首相を務めてもらう方が分かりやすい。
麻生太郎幹事長は公明党の意向を反映していると見られている。福田首相の支持率が低迷する場合、首相を麻生氏に代えて総選挙に臨むオプションが用意されたのが8月1日の内閣改造だ。公明党の意向を反映する麻生幹事長を軸に、総選挙に向けての与党の政策がまとめられる。
総選挙に向けて自公政権が提示する新政策が「偽装消費税封印」、「偽装無駄ゼロ政策」、「偽装景気対策」の「偽装3兄弟」である。有権者は「偽装」に騙されてはならない。
自公政権は非自公票の受け皿として「偽装CHANGE」勢力を用意する可能性がある。「反官僚利権」を装う偽装集団だ。福田改造内閣で排除された「上げ潮派」、「TPL」、「小泉チルドレン」を中心とする「小泉一家」、「小泉一家」直系の「脱藩官僚の会」、自民別働隊の知事グループが連携して「偽装CHANGE」勢力を立ち上げる可能性がある。
しかし、「偽装CHANGE」勢力が官僚利権を根絶する可能性はゼロだと考えられる。「偽装CHANGE」勢力=「小泉一家」の構造を考えれば、官僚利権を根絶する可能性はゼロと考えざるを得ないからだ。
小泉政権は5年半にわたって独裁権力を濫用した。三権プラスマスメディアの四権を実質的に独占し、専制的に権力を行使した日本で初めての政権だった。小泉政権にその意思があれば、官僚利権を根絶することは十分に可能だった。しかし、小泉政権は財務省、警察庁、検察庁を軸とする自民党清和政策研究会(町村派)が基盤を置く官庁の利権を死守した。小泉政権は官僚利権最大の擁護者として行動した。
「小泉一家」が官僚利権根絶に動く可能性はゼロだと私は確信する。小泉政権が発足した瞬間から、私は小泉政権に対して「天下り根絶」を訴え続けた。政府系金融機関改革は最も分かりやすいリトマス試験紙だった。小泉政権に「天下り廃止」の意思があるなら、財務省からの天下りを廃止すべきだったが、小泉政権は当然のことながら天下りを完全に温存した。
だから国民は「偽装CHANGE」勢力に騙されてはならない。「偽装CHANGE」勢力は「政治権力=政治利権」を死守したい自公政権が「権力維持だけを目的に用意する自民別働隊」なのだ。
自民党は「政官業外電=悪徳のペンタゴン」による癒着構造の上に乗って権力を欲しいままに独占し、利権を享受し続けてきた。官僚は「天下り」を軸とする「官僚利権」を獲得することと引き換えに、自民党利権政治に全面協力してきた。
従来の「政官業」癒着の構造に、新たに「外国資本」、「電波=マスメディア」を利権構造に組み込んだのが小泉政権だった。「政官業外電」が強固な「利権互助会」を構築し、一般国民から甘い蜜を吸い続けた。一般国民は利権集団に身も心も吸い尽くされ、生存することさえ困難な状況に追い込まれた。
一般労働者の3分の1は「非正規雇用地獄」に送り込まれた。将来を担う若年層では2分の1が地獄送りである。自公政権は若者が自分の将来に絶望し、自暴自棄になる原因を生み出してきた。
戦後の混乱期に努力を積み重ねて日本を発展させた高齢者は、ようやく平穏な余生を送ろうとする局面で人間の尊厳を傷つける酷(むご)い仕打ちを受けている。小泉政権が野党の反対を押し切って導入した「後期高齢者医療制度」は、高齢者に対して「病気で医者にかかるのは現役世代の迷惑であることを自覚しろ」と言わんばかりの制度だ。
ハンディキャップを負った障害者が生存権を脅かされずに生きてゆける社会の構築を目指さなければならないのに、「障害者自立支援法」は冷酷に障害者に対する政府支出を切り込んだ。暫定的に高率税率を適用しているガソリン税は、適用の目的であった道路整備が実現した時点で、本則基準の税率に戻すべきものだ。しかし、自公政権は期限が切れた暫定税率を衆議院の数の力で復活させた。国民から奪い取った金は死んでも返さない体質が滲み出ている。
総選挙に向けて「利権死守を至上目的とする自公政権」が「手段を選ばぬ」行動を示すことは間違いない。当然、支配下にあるマスメディアを総動員する。国民が「自公政権の偽装攻勢」に騙されないためには、野党が結束して真実を国民に伝えなければならない。
決戦となる総選挙に際して銘記すべき重大事項が三つある。三つの重大事項を確認し、すべての有権者に浸透させることが必要だ。
第一は、政権交代の最大の狙いが「日本の政治の主役を変える」ことにあることだ。現在の自公政権下の政治構造は「政官業外電」の「利権互助会」が利権を欲しいままに吸い尽くす体制だ。一般国民が「悪徳のペンタゴン」に食いものにされ、搾取されてきた。
「政官業外電」が吸い尽くしてきた利権を正当な権利に姿を転換し、一般国民の手に引き戻すことが政権交代の目的なのだ。「政官業外電」の利権を守る新しい政権が誕生してもまったく意味はない。野党の中心に位置する民主党はマニフェストにこのことを明記しなければならない。「政官業外電の利権互助会を幸福にする政治」を排し、「国民を幸福にする政治」を構築することが政権交代の目的である。
第二は、総選挙に際して自公政権が示す景気対策が「偽装景気対策」であり、「偽装消費税増税封印」が図られることを明確にすることだ。「近視眼的な財政収支均衡至上主義」を強硬に推し進め、日本経済を破壊しつくしてきた小泉政権以来の自公政権は、今回もまた「無原則」、「無節操」、「無定見」の「バラマキ財政」に動く。
小泉政権も2001年度と2002年度の両年度にわたって、それぞれ5兆円の追加財源確保を含む超大型補正予算編成に追い込まれた。「小泉政権が財政出動せずに不況を克服した」との説明は嘘である。町村官房長官も先般のNHK日曜討論で嘘の説明をした。
福田政権は「2011年度基礎的財政収支黒字化」の目標を掲げながら、大型補正予算編成に動くだろう。「政治の品格」が問われる。しかも、財政出動は利権支出一色に染まるだろう。利権財政支出をエサにして選挙での自公応援を迫るのだ。
内容から言えば「バラマキ財政」は選挙目当ての「買収行為」そのものだ。公職選挙法は個別の「買収」を規制するが、国家ぐるみの買収を取り締まらない。
有権者が知らなければならないのは、自公政権が総選挙後に消費税増税を実行することだ。伊吹文明前自民党幹事長が明言したように、消費税について総選挙前は「目くらまし」することが確認されている。自公政権が維持される場合には、消費税大増税が待ち構える。伊吹前幹事長の発言は動かぬ証拠だ。
第三は、「利権互助会を幸福にする政治」と「国民を幸福にする政治」を見分ける明確な争点が「天下りの根絶」になることだ。福田政権は「無駄ゼロ会議」を組織して、「無駄ゼロ政策」を偽装する。
しかし、どのような「偽装」を施そうとも「天下り根絶」を明示しない「無駄ゼロ政策」は「偽装」にすぎない。「無駄」の中核は「天下り」に存在するのだから、「天下り」を根絶しなければ「無駄」は「ゼロ」にはならないからだ。「無駄ゼロ会議」がいかに「無駄な」会議であるのかは、財務省からの「天下り」根絶がまったく論じられないことで明らかになるだろう。
本当の「無駄ゼロ政策」が「ゼロ」の「無駄な会議」だから「ゼロ=無駄会議」と名称を変更すべきと思う。
民主党が「政官業外電=利権互助会を幸福にする政治」を「国民を幸福にする政治」に刷新しようとするなら、選挙公約に「天下り根絶」を明記しなければならない。「天下り」が維持される限り、政治の本質は変化しない。
民主党内部に潜伏する「隠れ自公派」が「天下り根絶」に反対なら、総選挙前に故郷の自公に帰るべきだ。
「利権互助会」に占拠されている日本の政治権力を国民の手に奪還することを野党が足並みを揃えて訴えるなら、野党は全面的な選挙協力を実施すべきだ。1996年10月の総選挙では、非自民票が新進党と民主党に分散したために、自民党が漁夫の利を得て勝利してしまった。その結果、日本経済が壊滅に向かった。
1996年の二の舞を回避しなければならない。共産党は民主党攻撃よりも自公政権攻撃に軸足を置くべきだ。民主党は共産党、社民党、国民新党と選挙協力を実施すべきだ。これらの政党にとって最も大切なことは、政治権力を利権互助会の手から国民に取り戻すことを希求する有権者の切実な声に正面から応えることだからだ。
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