「足して二で割る」無定見な福田裁定
臨時国会が9月12日に召集され、70日の会期で開かれることが決まった。福田首相は内閣改造に続き、臨時国会の会期決定問題でも持ち前の優柔不断さをいかんなく発揮している。
8月29日には総合経済対策が決定される見通しだが、対策の骨子が決まらない。財政再建と景気対策の二つの課題を睨んで政策方針が揺れ動いているためだが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ことになりかねない。
臨時国会の会期問題で福田首相は「足して二で割る」裁定を働かせた。首相提案の80日と公明党提案の60日を足して2で割ると70日になる。インド洋での自衛隊による給油活動を継続するための新給油法案を成立させるには期間が不足し、会期延長が必要になる。基本方針の決定を先送りしたと解釈される。
景気対策の規模については、5兆円規模の大型補正編成の主張と、追加財源措置を伴わない1兆円規模の主張があるから、「足して二で割る」と3兆円になる。
福田政権中枢には「財政再建派」に分類される議員が配置されており、総選挙後の消費税大増税を準備している。ただ、増税派の一人である伊吹文明財務相が7月16日に「(選挙に)勝とうと思うと(有権者に)一種の『目くらまし』をしなければしょうがない」と発言しているように、選挙用対策として「目くらまし」が実行されることになった。
選挙用の「目くらまし」=「偽装」は「消費税封印」、「景気対策」、「無駄ゼロ会議」の三つである。「目くらまし」の意味は、選挙向けに選挙民に人気のある政策を掲げるが、選挙が終了したら、掲げる旗をすべて入れ替えるということだ。
国民経済の安定を目的に「景気対策」を実行するのではない。選挙での得票を確保するために「景気対策」を実行するのだ。したがって、日本経済についての中期的な安心感を得ることはできない。
選挙用に景気対策を策定するのだから、その内容は当然、「利益誘導型」になる。原油高で漁業関係者の示威行動が全国的に広がったが、自公政権の利益誘導型原油高対策がすでに策定されていた。
福田政権は「近視眼的財政収支均衡至上主義」の財務省路線に乗っているから、政権発足以来、基本方針は「緊縮財政」だった。その福田政権の支持率が20%を割り込み、選挙を目前にして「集票行動」としての「景気対策」策定に追い込まれた。
「景気対策」策定を正当化するために、原油高での漁業関係者の苦境をマスゴミに連日、過熱報道させた。同時に内閣府には実質的な「景気後退宣言」を発表させた。8月25日の内閣府による「日本の需給ギャップがマイナスに転じた」との発表も、政府の景気対策策定を正当化するための環境整備である。
原油高対策に向けての景気対策として、最も分かりやすく、透明性の高い施策は「ガソリン暫定税率廃止」だ。本年4月に暫定税率は期限切れを迎えていったん廃止された。その暫定税率を福田政権は衆議院の3分の2以上の数の力で復活させてしまった。平年度2.6兆円の増税が実施されてしまった。
自公政権は一般国民を犠牲にして、「特権官僚」、「大資本」、「外国資本」、「マスゴミ」の利益だけを追求してきた。「政官業外電の利権互助会」の利権を守るためには、総選挙で敗北するわけにはいかない。総選挙で敗北しないために政策が策定されている。
年金記録問題に対する責任逃れ一辺倒の対応、障害者自立支援法、後期高齢者医療制度、非正規雇用者の激増など、一般国民に対する自公政権の対応は苛烈を極めた。選挙の直前に限って「別の顔」を見せる自公政権の「偽装」に有権者は騙されてはならない。
福田政権は郵政民営化に当初反対し、その後に賛成に転向した議員を政権幹部に登用した。特定郵便局組織票を獲得するためだ。しかし、福田首相が郵政民営化路線を否定しているのかと言うと、「小泉改革路線は継承する」のだという。すべての政策があいまいで、その場しのぎ、重要問題の先送りになっている。
自民党は総選挙での供託金没収基準の引き下げを検討している。この問題は「Easy Resistance」さんがブログで取り上げ、私も7月18日付記事で記述した。背景は共産党が次期総選挙で立候補者を絞り込むことにある。得票が法定得票数に達しない場合、供託金が没収される。共産党は前回総選挙で6億円超の供託金を没収された。
次期総選挙で共産党は160選挙区で候補者擁立を見送る方針と伝えられている。共産党が候補者を擁立しない選挙区では民主党候補者が得票を上積みする可能性が高い。自民党はこの点に着目して供託金没収基準の引き下げを検討している。
自公政権を利するために選挙ルールを変えるのはルール違反だ。民主党が複数候補による代表選挙を実施しないことを「民主主義に反する」と批判する政党の行動とはとても思えない。
福田政権は「無駄ゼロ会議」を開催して「政府支出の無駄排除」をアピールしようとしているが、会議の舞台回しをしているのは財務省である。財務省の基本政策は「官僚利権を擁護し、セーフティーネットを破壊する」ことである。一般国民向けの施策は2000年代に入ってから激しく破壊されてきた。一方で、財務官僚の「天下り利権」は温存されてきた。
福田政権が「無駄ゼロ会議」をアピールするなら、「財務官僚の天下り利権の根絶」を最終結論に盛り込むべきだ。「財務官僚の天下り利権」が温存される限り、いかなる見せかけの「偽装」が施されても、それが単なる「目くらまし」であることが判明してしまう。
政府御用番組横綱格の「TVタックル」は9月1日放送で、「偽装CHANGE勢力」の広報を行うようだ。「脱藩官僚の会」に代表される「偽装CHANGE勢力」の母体は「小泉一家」である。「上げ潮派」、「TPL」、「小泉チルドレン」、「自民別働隊の知事グループ」が連携する可能性もある。
「偽装CHANGE勢力」が「官僚利権根絶」の旗を掲げても、有権者は決して信じてはならない。「偽装CHANGE勢力」の母体である「小泉一家」は5年以上の政権担当期間、一貫して官僚利権を温存してきた実績を持っているのだ。「小泉一家」が官僚利権根絶に向かう可能性はゼロである。
「偽装CHANGE勢力」は守旧型自民党に回帰した福田政権に対して反発する有権者の票を獲得するための「偽装」である。目的は「政官業外電=悪徳のペンタゴン」による「利権互助会」の利権を温存するため、政権交代を阻止することにある。
「御用マスゴミ」は自公政権の利権維持に全面協力する。御用番組東西両横綱格の「TVタックル」と「サンデープロジェクト」が足並みをそろえて御用政府広報を実施する可能性もある。
「偽装」でない「真正」の「CHANGE」は政権交代によってしか実現しない。この「真実」をネットが発信する情報を通じてすべての有権者に伝えてゆかねばならない。
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