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2008年7月15日 (火)

注目されるバーナンキFRB議長議会証言

本日7月15日、バーナンキFRB議長が米国上院銀行委員会で金融政策について証言する。半年に一度の金融政策報告だ。16日には下院金融委員会で証言する。

景気後退、金融不安、インフレ懸念の三重苦に直面する米国経済。問題解決の方向を示すことができるか。金融不安は金融機関の破綻リスク、ドル不安、株価下落の形態で生じている。

   

洞爺湖サミットではドルの不安定性と原油価格高騰が経済討議の主要議題になったが、ブッシュ大統領は専門知識と危機意識を欠いており、即効性のある具体策は提示されなかった。

本ブログでは7月5日付記事「洞爺湖サミット原油高対策の有効性」に「サミットで十分な戦術が練られず、実効性を伴わない表面上の合意しか成立しない場合には、サミット直後に金融市場が混乱して警鐘を鳴らす可能性がある。」と記述した。

   

会員制レポート 『金利・為替・株価特報2008年6月7日号』では、6月6日にNYダウが重要な下値抵抗ライン12,500ドルを明確に下回ったことを踏まえて、日米株価の下落見通しを提示した。

米国金融市場の3月危機が克服され、金融市場安定化の可能性が浮上していたが、インフレ懸念が強まり、米国の金融政策の引き締め方向への転換が想定され、米国で株価が下落し、連動して日本の株価も下落するとの予測を示した。

   

予測通り、日米株価は6月6日以降、下落基調をたどって現在に至っている。景気後退、金融不安、インフレ懸念の三つの不安に覆われ、米国金融市場の先行き警戒感は非常に強くなっている。このタイミングでバーナンキFRB議長が議会証言を行う。注目しなければならない。

   

米国の不動産価格が大幅に下落しており、米国経済の調整は免れない。米国経済は2008年4-6月期からリセッションに突入したと見て間違いない。

今週は本日15日に6月小売売上高、16日に6月鉱工業生産指数が発表される。減税効果で小売売上は底堅く推移しているが、住宅投資の大幅減少、株価下落を背景にする景気後退は2009年まで持続する可能性が高い。

   

金融市場の最重要問題は金融不安とインフレ懸念である。3月に投資銀行ベア・スターンズ社の経営危機が表面化して、FRBは動揺した。年初に4.25%だったFFレートを4月末には2.0%にまで引き下げた。併せてFRBは290億ドルの特別融資を実行した。

   

大手金融機関の破綻を契機に破綻が連鎖的に広がり、金融市場が機能不全に陥るリスクを「システミックリスク」という。米国政策当局はシステミックリスクの排除に乗り出している。

ポールソン財務長官とバーナンキFRB議長は慌ただしく政策対応を模索している。投資銀行の経営危機表面化時の政策対応に関する法整備が急きょ検討されている。

  

ここ1週間、追い打ちをかけるように米政府支援機関(GSE)の経営危機が表面化した。米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営危機が明らかにされた。

両社の長短債務と住宅担保証券の合計は日本のGDP規模に匹敵する5兆ドルに達する。世界各国は外貨準備としてGSE債を大量保有しており、GSE債の市場価値下落は世界の金融市場をパニックに陥れる震源になる。

米国政策当局はGSEに公的資金を注入し、システミックリスクを排除することを迫られている。金融恐慌を引き起こすことはできないから、米国政府は金融不安を後退させるためにあらゆる手を尽くすことになるはずだ。

  

もうひとつの重大な問題がインフレ懸念だ。インフレ懸念の最大の背景はFRBが短期政策金利を大幅に引き下げたことにある。今週は15日に6月卸売物価指数、16日に6月消費者物価指数が発表される。

5月の消費者物価上昇率は前年同月比4.2%だった。2.0%のFFレートは-2.2%の実質金利を意味する。FRBはインフレ懸念を抑制するために、短期金利を引き上げる必要性を認識し始めた。景気後退と金融不安の下での金利引き上げは、金融市場にショックを与えるリスクを伴う。

  

①金融不安を遮断し、②インフレ懸念を払しょくする。この二つが当面の米国の課題だ。景気低迷がある程度持続することは避けようがない。短期的な調整を嫌って、金融緩和を維持すれば、本格的なインフレを招いて、その後の強力な金融引き締めと景気の大幅落ち込みを招いてしまう。

バーナンキ議長は①と②の政策の重要性を示すのではないかと考える。米国経済の低迷が2009年半ばまで持続する見通しも提示するだろう。だが、同時に、中長期的にインフレリスクが排除され、米国経済が回復しうるとの楽観的な見通しが付け加えられるのではないか。

  

バーナンキ議長の説明が金融市場を安心させるものになれば、株価が反発し、米国金融市場は一時的に落ち着きを取り戻すことになる。2006年7月の議会証言では、バーナンキ議長は金融市場の不安心理を後退させることに成功している。

しかし、米国のインフレ懸念を払しょくするには1度ないし、2度のFFレート引き上げが必要になると考える。8月5日のFOMCで利上げが決定される可能性も十分に考えられる。

金利引き上げ政策が想定される状況下では株価上昇は持続しにくい。NY株価が一時的に反発する場合でも、米国の利上げが一巡するまで、NYダウの10,500ドル水準までの下落には引き続き警戒すべきだと考える。

  

福田政権は日本経済が不況に移行した可能性が極めて濃厚であるのに、まったく反応を示していない。経済運営においては、不況初期の政策対応が極めて重要だ。病気と同じで、「早期発見早期治療」が重病を招かない秘訣である。

ところが、日本経済の主治医である財務省は完全な藪医者である。病気の初期に決まって患者に無理をさせる。軽い風邪を訴える患者に寒中水泳や炎天下のランニングを命じて重病に陥らせる。結局、治療費は膨大になる。

  

早期の景気対策策定が肝要だが、まったく生体反応が示されていない。政府は日銀に超緩和の金融政策を求めるが、超緩和の金融政策が円安をもたらし、日本の国力低下をもたらしている。

適正なポリシー・ミックスが考察されていない。日本経済を暗雲が覆い始めていることにも留意すべきだ。

バーナンキFRB議長の証言では、金融システムとインフレに関する二つの不安に対してFRBがどのように対応するのかについての発言に焦点が当てられる。

短期的に米国経済に負荷が与えられても、中長期の視点での適正な政策が示されるのかがポイントになる。バーナンキ議長の真価が問われる議会証言になる。

  

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