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2008年7月 6日 (日)

民主党が天下り根絶法案提出へ

  

次期総選挙は政権交代を問う決戦の場になる。政策の対立軸を明確にしたうえで与野党が政策を明示し、国民が政権を選択することになる。私は弱肉強食放置VSセーフティーネット重視、官僚利権温存VS官僚利権根絶、対米隷属外交VS独立自尊外交、の三つが政治の対立軸になると考える。

  

2番目の対立軸である官僚利権についてどのような対応を示すのかは、新しい日本の体制を考える上で最重要事項になる。私は日本の最大の構造問題は財務省を中核とする「官僚主権構造」にあると考えている。「官僚主権構造」の問題とは、①官僚機構が意思決定の実権を握っている、と同時に、②官僚機構が国民の幸福を追求せずに、自己の利益増大を追求していること、③政治がこの現状を「改革」しようとせずに「温存」していること、である。

   

この問題への対応は、具体的には公務員制度および天下り制度の改変に表われる。小泉政権は「改革」を標榜していたが、「官僚主権構造」には指一本触れることをしなかった。小泉元首相は典型的な「大蔵族」、「財務族」議員であり、財務省の権力は小泉政権の期間、著しく増強された。財務省の天下り利権は徹底的に温存された。

   

日銀幹部人事が紛糾した最大の原因は福田首相が財務省の天下り利権温存に執着したことだった。政治権力に支配されているマスメディアが政府提案に反対した民主党の対応を一貫して批判した事実は、目を覆うばかりのメディアの堕落を示している。

  

民主党をはじめとする野党は、財務省が実質支配する政治権力の構造に根源的な問題が存在することを看破し、財務省利権の象徴である日銀天下り人事にくさびを打ち込むことを最重要視したのだ。その政治行動は後世において必ず高く評価されることになるだろう。

   

   

福田政権は先に終了した通常国会で国家公務員制度改革基本法を成立させた。中川秀直自民党前幹事長は著書「官僚国家の崩壊」のなかで、この法律を100年ぶりの画期的な法律と絶賛している。しかし、私の評価はまったく異なる。

  

7月4日付記事「諸悪の根源は本当に府職員か」に記述したが、私は公務員制度改革について、①第1種国家公務員を第2種国家公務員と統合して廃止、②天下り制度の全廃、③公務員の定年までの雇用保証、の三つを骨子とする提言(拙著『知られざる真実』の89-98ページ)を示してきた。

   

政府は成立した法律によるキャリア制度廃止を謳っているが、総合職、専門職、一般職と名称が変わるだけで、キャリア制度は完全に合法化される。しかも、キャリア官僚の天下り特権は完全に温存される。

  

自民党の中川秀直氏は「上げ潮派」を自任し、官僚利権根絶を提唱し始めた。小泉元首相、小池百合子環境相、渡辺喜美行革相、武部勤自民党元幹事長、小泉チルドレンなどが連携する気配を示している。

  

8月にも旗揚げが予想される「脱藩官僚の会」や橋本大二郎元高知県知事などが中川氏などと連携して政治新勢力を創設することも考え得る。これらの裏側で小泉元首相、飯島勲氏、竹中平蔵氏などが蠢いているようにも見受けられる。

  

   

しかし、これらの政治新勢力に根本的な改革実行を期待することはできない。政治新勢力は自民党別働隊として、既存の政治権力による権力死守を目的に偽装を施しているとしか考えられない。小泉氏、中川秀直氏、竹中平蔵氏などが本当に官僚利権を根絶する考えを有しているなら、小泉元首相が絶対的な権力を保持している間に、いくらでも改革を実行できたはずだ。

   

小泉政権の時代に公的金融機関の抜本改革が論議され、新しい方向が定められた。私はこの改革において財務省からの天下りを根絶するのかどうかが最大の焦点だと述べ続けた。日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫は財務省の最重要天下り機関で、「御三家」と呼ばれていた。御三家への天下りを根絶することが改革の第一歩であり、官僚利権削減の象徴になることを、私は2001年の小泉政権発足時から主張した。

 

   

しかし、小泉政権、安倍政権は天下りを結局死守した。天下り根絶など、まったく検討していないことが明白になった。6月28日付日経新聞は、日本政策投資銀行が2008年3月期にサブプライム問題で300億円超の損失を計上したことを報じた。役割を終えて業務を縮小させるべき政策投資銀行が無節操に業務を拡大して巨額損失を計上している。

    

巨額損失にもかかわらず、財務省から天下った幹部の責任はまったく問われていない。政策投資銀行の業務拡大は、民営化を控えて財務省利権を拡大させるために推進されていると考えて間違いない。

  

国際協力銀行もとっくに役割を終えて廃止が検討されるべきであるのに、中国などでの二酸化炭素削減プロジェクトに積極融資するなど、新規事業を急拡大させている。小泉政権は「政府のスリム化」などを謳っていたが、財務省利権の拡大に関してはまったく逆の対応を示している。

  

   

福田政権は天下りの温床である公益法人のうち、行政と密接な関係にある350の公益法人の見直しを進めているが、7月4日に発表された中間報告では、解散を明記されたのは2機関にとどまった。福田首相は公益法人への支出を3割削減したいと述べているが、「政府の無駄ゼロ」には程遠い。

  

   

自民党政権は官僚利権と表裏一体をなしている。「改革」を標榜した小泉政権は財務省と運命共同体を形成し、財務省の利権は小泉政権によって維持拡大された。既存権力による官僚利権根絶が存立し得ないことは、歴史の事実が明確に証明している。

  

民主党は8月下旬に召集される次期臨時国会に天下りあっせん禁止を定める法律案を提出する方針を固めた模様である。法案には、①天下りのあっせん禁止、②定年前の勧奨退職禁止、③65歳まで公務員定年引き上げ、が盛り込まれる見通しだ。

   

先の通常国会で与野党の合意で成立した公務員制度改革基本法には与党が抵抗して天下り改革が盛り込まれなかった。民主党は改革を半歩でも前に進めるために法立成立に協力したが、成立した法律で目的が達成されていないことは明白だった。天下り温存に固執する与党との相違を明確にするために、民主党は天下り禁止法案を国会に提出する見通しだ。

   

道路特定財源の一般財源化も、私は「国土交通省から財務省への所得移転にすぎない」と主張してきた。民主党の菅直人代表代行は「政府のやり方では国土交通省から財務相に権限が移るだけ」として、道路財源に絡む権限や財源を国から地方自治体に大幅に移すよう主張していることが報じられている。

  

  

政府与党は、8月にも政治新勢力を創設して、官僚利権根絶などの施策をアピールする可能性がある。フジテレビ月9ドラマ「CHANGE」が政府与党の政治活動を支援する形で政治利用されている可能性については、本ブログで再三指摘してきた通りである。

  

しかし、すでに記述してきたように、既存の政治権力が官僚利権を根絶することはあり得ない。小泉氏、中川氏、竹中氏が官僚利権死守に尽力してきた事実の重みを再確認しておくべきだ。

  

  

本年夏以降、国民の目をくらますための大きな偽装工作が展開される可能性があるが、国民は「真実」、「真相」を正しく見抜かなければならない。民主党内部にも官僚利権を根絶しようとする行動に対する抵抗が根強く存在している。しかし、民主党が真の改革実現を目指し、「官僚主権構造」を破壊して、「国民主権構造」を構築しようとするなら、党内の抵抗を排除しなければならない。

  

また、自民党勢力と内通する民主党内部の反乱分子を、時期を失することなく摘出することが求められる。民主党による天下り禁止法案提出の意思決定は重要だ。国民が既成の政治権力による偽装工作に騙されることのないよう、野党勢力は政策の相違を明確にし、国民に積極的にアピールしなければならない。

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