日米首脳共同記者会見でのハプニング
北海道洞爺湖サミットが7月7日午後開幕した。サミット開幕に先立って7月6日午後、日米首脳会談が開催され、会談後ブッシュ大統領と福田首相による共同記者会見が行われた。
サミット直前に米国は北朝鮮に対するテロ支援国指定解除の手続きを開始した。日本政府は米国に対して拉致問題を解決しない段階でのテロ支援国指定解除に反対の意思を表明してきたが、米国に梯子を外された形になった。
日本国内では、拉致問題が置き去りにされることに対する懸念が増しており、日米首脳会談で福田首相がこの点について、日本の立場を明確にブッシュ大統領に示すことが求められていた。ブッシュ大統領は「拉致問題を置き去りにしない」と言明したが、その実効性が問われることになる。
共同記者会見では外国人記者2名、日本人記者1名から質問が出されたが、3人目のワシントンポスト記者からの質疑応答でハプニングが生じた。
記者はブッシュ大統領に北京オリンピック開会式への参加意向表明について質問し、中国の人権問題とチベット問題などについてのブッシュ大統領の見解を質した。福田首相に対しては、米国大統領選の共和・民主両党の候補者オバマ氏とマケイン氏に対するコメントが問われた。
福田首相は、「(質問の内容は)北京オリンピック開会式への出席についての考え方についてということでいいですね」と確認したうえで、北京オリンピック開会式への出席についての考え方を語った。
記者は英語で質問したが、日本語の同時通訳が用意されていたはずだ。ブッシュ大統領はイヤホンを使用して日本語の英語訳を聞きながら記者会見に臨んでいたが、福田首相はイヤホンを使用せず、外国人記者の質問を英語のまま聞き取っていたようだ。
その結果、記者の質問と無関係に、米国大統領選挙の話題にはまったく触れず、質問されていない北京オリンピックへの出席について語ったのだと思われる。
国際会議では言語の相違が論議のひとつの障害になる。この障害を取り除くために質の高い通訳が用意される。通訳が正確に情報を伝えなければ、重要な国際間の取り決めを決定することもできなくなる。
今回のサミットで福田首相は、議長の大役を担う。通訳を介さずに完全なコミュニケーションを実現できるなら、生の言葉での討議が望ましいが、通訳を介さないために、意思疎通に問題が生じるのでは元も子もなくなる。
巨大な費用と時間を投下するサミットである。サミットでの論議が最大の効果をあげるため、福田首相には実直な対応が強く求められる。
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