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2008年7月 1日 (火)

不況突入の日本経済に逆行する福田政権

  

7月1日、日銀短観2008年6月調査結果が公表された。企業の景況感悪化はより鮮明になり、日本経済が景気後退局面に移行したことは確実な情勢になった。原油価格上昇に伴い、ガソリン価格も天井知らずの上昇を続け、生活関連物資の値上げもラッシュの様相を示している。

  

このなかで、福田政権は後期高齢者医療制度を強硬に発足させて高齢者いじめの政策を推進し、年金記録問題では政府公約を反故にしながら、まったく誠意のある対応を示していない。7月7日から9日にかけて開催されるサミットを支持率回復に利用しようとの私的な利害だけが優先されている。

  

政治は国民の幸福を実現するために存在する。政治が国民生活の苦しみを知ろうともせず、ごく一部の者の利益だけを考えて行動するなら、主権者である国民はそのような政府を、政治権力を掌握する地位から退場させるべきである。次期総選挙は国民が叡知を結集して政権交代を実現させる舞台になる。一つ一つの重要な問責対象を整理して記憶してゆかねばならない。

  

  

温暖化ガスの排出権取引の基準となる排出量を拙速に決定するべきでない。消費税増税の論議がかまびすしくなってきているが、消費税増税論議に入るための前提条件がまったく整っていない。机上の財政再建目標よりも、生身の国民の生存権が尊重されなければならない。福田政権の誤りを明確に示し、国民が福田政権にNOの意思を示す正当性を確立しなければならない。

 

   

7月1日に発表された日銀短観2008年6月調査では、大企業製造業の業況判断DIが3月調査のプラス11からプラス5へ、6ポイント低下した。非製造業ではプラス12からプラス10へ2ポイント低下した。

  

大企業製造業の業況判断DIは、2003年9月調査以来、4年9ヵ月ぶりの低水準になった。日本経済は昨年末を転換点に景気後退局面に移行した可能性が高い。

  

  

中小企業の業況判断DIは、製造業が3月調査のマイナス6からマイナス10へ4ポイント悪化、非製造業ではマイナス15からマイナス20へ5ポイント悪化した。中小企業で業況判断DIがプラスの業種は、製造業15業種中5業種、非製造業12業種中の1業種のみになった。中小企業の業況は完全に不況のさなかに回帰している。

  

今回の景気回復局面は2002年1月に始動したとされ、景気回復の期間では戦後最長とされているが、中小企業のほとんどは景気回復とは無縁だった。素材および組立て加工の製造業においては、中小企業でも業況が一時改善したが、軽工業および非製造業は景気回復から取り残されたまま、新たな不況に突入している。

   

  

2008年度の企業経常利益は大企業で7.0%減少、全規模合計で4.4%減少する見通しである。7年ぶりに減益が見込まれている。全産業全規模合計の設備投資は2008年度1.4%減少する見通しが示された。また、販売価格、仕入価格判断では、価格上昇の見通しが一段と強まっている。

    

大企業の企業収益が過去最高を更新し続け、日本経済の回復期間が長期化するなかで、国民生活が浮上してきたかのような錯覚が広がっているが、小泉政権が登場して以来、日本経済の歪みは拡大の一途をたどってきた。

  

非正規労働者が激増し、一生懸命働いても年間所得が200万円に満たない「ワーキングプア」と表現される若年労働者が激増した。障害者、高齢者、母子世帯などに対する社会保障政策は無情に切り込まれてきた。一般勤労者も、特別減税や配偶者特別控除制度廃止などに伴う個人所得税増税、年金保険料増加、医療費本人負担増加などの負担増加政策にあえいできている。

  

  

本年5月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除くベースで前年同月比1.5%上昇し、消費税率引き上げの影響があった1998年3月以来、ほぼ10年ぶりの高い伸び率を記録した。前年同月比上昇は8ヵ月連続で、消費税率の影響を除くCPI上昇率では、1993年3月の前年同月比1.6%上昇以来、15年2ヵ月ぶりの高い上昇率になった。

  

7月1日からは、ガソリンの店頭販売価格が1リットルあたり10円以上も値上がりし、6月30日には、各ガソリンスタンドに給油しようとするマイカーの長蛇の列ができた。ティッシュペーパーなどの生活必需品も7月1日から軒並み値上げされたことから、6月末のスーパーマーケットには生活を防衛しようとする消費者が多数押しかけた。

  

  

小泉政権が敷いた「弱者切り捨て=弱肉強食容認=拝金主義賞賛の市場原理至上主義」は日本経済の根幹を崩壊させつつある。汗水流して頑張った人が相応に報われることが尊重される土壌のなかで、相互信頼と相互扶助の精神を支えてきた広範な中間層が音を立てて崩壊しつつある。

  

さまざまな事情で生存権を脅かされている人々に、政府が適正に手を差し伸べて、基本的人権を適正に尊重するのが現代の福祉国家の当然の責務で、その方向に進むべき日本政府が、小泉政権以降、正しい目標から完全に背を向けた。

  

金融市場の特性を悪用して不正に巨大な利得をあげる人物を「頑張った人が報われる社会の成功者」として絶賛し、命がけで制度変更を阻止しようとした障害者に見向きもせずに、非情な障害者自立支援法を強行採決で成立させ、「姥捨て山制度」と称せられる後期高齢者医療制度を無理やり実施してきたのが小泉政権以降の自公政権である。

  

  

福田政権は、さらに消費税増税に具体的に動き始めた。国民本位の社会保障制度を構築し、官僚利権を根絶し、国民生活をしっかりと支える政策運営を示したうえで、最終的に国民負担増加が必要になるなら、国民は応分の負担を進んで受け入れるはずだ。しかし、現状はこれらの条件が何ひとつ整っていない。次期総選挙で自民・公明政権が延命したなら、必要な政策を示さずに必ず大増税に進むはずだ。

  

  

消えた年金記録問題で明白に示されたように、自公政権の選挙公約は守られない。選挙だから日本語を縮めて表現したと弁解し、事後に公約違反を問われてもとぼけ通す政権なのだ。

  

  

日本経済はすでに不況に突入している。過去の事例を見ても、財務省が主導する政権は、不況の初期に緊縮政策に執着して不況を深刻化させる性癖を保持している。今般の不況に際して、最も有効な不況緩和政策は「ガソリン暫定税率の廃止」だった。ガソリン暫定税率の適用期間を再延長する法律案は2008年3月末までに成立せず、4月にはガソリン税率が本則基準に戻った

  

ところが、福田政権は衆議院の与党多数の数の力で、参議院の決定を無視して、2.7兆円の増税を実施してしまった。不況初期の2.7兆円増税が日本経済に及ぼす強い下方圧力は計り知れない。

  

格差拡大、弱者切り捨ての経済政策は、非常に優秀で柔軟な能力を持つ、層の厚い中間層を破壊し、日本経済の基礎力を弱めているだけでなく、深刻な社会情勢を生み出す原因にもなっている。

  

秋葉原での殺傷事件は、派遣労働者の厳しい労働条件を改めて世に知らせる結果をもたらした。事件を経済政策と直接結び付ける考えはないが、若年労働者の就労機会の悪化が大きな社会問題になっていることは否定できない。

 

   

福田政権は国民生活の苦悩をよそに、洞爺湖サミットでの得点稼ぎに余念がなく、権力迎合のNHKをはじめとするマスメディアは「エコエコ報道」に狂奔している。この問題については、改めて考察したいが、温暖化ガスの総排出枠の決定には恣意性が残り、実態に合わない枠を設定すると資源配分に歪みが生じることを忘れてはならない。

  

環境省は京都議定書での目標実現のために年間6094億円の予算が必要になるとの試算をまとめた。現在の関連予算と合わせると2009-11年度で毎年1.1兆円が必要になるとのことだ。

  

  

洞爺湖サミットでは、会議に伴い発生する温暖化ガスを外部から購入、取得する排出枠で相殺して、差し引きゼロにすると喧伝されているが、システム全体の整合性、完全性を考慮せずに机上の数字合わせをしてみたところで、単なる自己満足の域を出ない。

   

そもそも、地球温暖化仮説に対する懐疑論が根強く残るなかで、科学的根拠の精密な分析を棚ざらしにしたままの政治主導での環境問題論議からは、巨額の政府予算に伴う利権まみれの利害関係者の行動が透けて見えてくるだけだ。

  

環境問題への巨額の国費投入、消費税論議、社会保障関係費の切り込み、格差拡大の放置、景気悪化への無関心、天下り利権の温存、のすべての政策において、政策の優先順位の誤り、政策の方向の誤りを感じないわけにいかない。心ある国民が次期総選挙での政権交代に全力をあげて取り組むことになるのは当然の帰結である。マスメディアの報道にも問題があるが、野党による国民への強いアピールが求められる。

  

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