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2008年7月16日 (水)

7/15バーナンキFRB議長議会証言

7月15日、バーナンキFRB議長が米国上院銀行委員会で半年に一度の金融政策報告を行った。バーナンキ議長は住宅市場の低迷やクレジットの逼迫、原油価格上昇が経済の脅威になっていると述べ、金融市場や各機関が「かなりの緊張(considerable stress)」の下にあるしたうえで、金融市場の安定回復がFRBの最優先事項との認識を示した。

    

FRBの政策スタンスが動揺している。6月24、25日のFOMCでFRBは、成長リスクが低下し、インフレリスクが増大したことを表明した。

ところが、1ヵ月も経過していない今回の議会証言では、再びインフレリスクから成長リスクに主要関心事項を変更したことを示唆した。

   

バーナンキ議長は米国経済が金融市場の緊張、雇用の悪化、住宅の値下がりなど「重大な試練に直面している」と認め、住宅公社2社の経営不安などの金融市場の混乱について、「金融市場の正常化がFRBにとって最優先課題」と強調した。

世界の金融市場に重大な脅威を与えかねない住宅公社2社の経営危機に対する強い危機意識を示した。

    

バーナンキ議長は16日には下院金融委員会で金融政策について報告する。また、同日6月米国消費者物価指数が発表される。

15日に発表された6月米国卸売物価指数は前月比1.8%、前年同月比9.2%の大幅上昇を示した。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比0.2%、前年同月比3.0%の上昇だった。

総合指数の前年比で9.2%上昇は、1981年6月の10.4%上昇に次ぐ高い水準となった。エネルギー価格は前年比で27%上昇した。

バーナンキ議長がインフレリスクよりも景気・金融リスクを強調したことから、16日発表の消費者物価コア指数の前月比上昇率は0.2%にとどまると考えられるが、米国のインフレ圧力が極めて強くなっていることは確かである。

  

米国のFFレートは2.0%にまで引き下げられている。現在の米国のインフレ率を踏まえると、米国の実質短期金利は大幅マイナスに低下しており、インフレ促進的な水準にある。

この金融超緩和がドル下落圧力を生み、投機資金の原油市場への流入を促進している。

  

それでも、バーナンキ議長が金利引き上げの可能性を示さなかったことは、米国経済の実態が深刻に悪化し、金融市場が極めてぜい弱になっていることを示唆している。15、16日の議会証言で利上げを示唆しなければ、8月5日のFOMCでの利上げ決定は困難である。

  

①金融システムリスクと②インフレリスクの二つの難問に直面するFRBが、当面、①金融システムリスクへの対応を優先する政策方針を示したことになる。

ポールソン財務長官は、政府が表明したGSE(政府系住宅金融機関)2社に対する支援策について、「緊急時への備え」だと述べた。両社の債務残高は日本のGDPに匹敵する5兆ドルに達しており、GSE2社の経営不安は世界の金融市場を根幹から動揺させることにつながる。

   

15日のNY先物市場では、米国経済の悪化と金融市場の不安定性に対する認識から、原油価格が大幅に下落した。

FRBが利上げに動かなくても、原油価格が経済の先行き不安から下落基調に転じれば、米国のインフレ懸念は後退する。この場合には、金融システム対応を優先させるFRBの政策手法は是認されることになる。

  

しかし、超緩和の金融政策がドル下落と原油価格高騰を持続させる場合には、FRBはますます困難な状況に追い込まれることになる。

景気悪化とインフレの同時進行という、「スタグフレーション」をFRBが放置することにもなりかねない。

  

16日の議会証言でバーナンキ議長がインフレリスクに対する金融政策のスタンスについて、追加的なメッセージを提示するのかどうかが注目される。FRBが15日の議会証言通りに、現状の政策運営を維持する場合には、金融システム不安とともに、ドル下落、原油価格上昇、米国株価下落に対して、一段の警戒を払う必要が生じるだろう。

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