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2008年7月25日 (金)

「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」(2)

財務省の辞書には「学習」という言葉がないと見られる。97年度、2001年度に続いて、3度目の政策失敗を演じる可能性が漂い始めている。

日本経済はバブル崩壊後、1991年年初に不況に移行し、私は1992年年初から景気支持政策策定を提唱したが、財務省は景気支持政策に強硬に反対し、景気対策は株価が暴落した92年8月まで先送りされた。

この失敗を含めれば4度目の失敗になる。

先述したように、97年度の政策運営の総責任者であった橋本元首相は97年度の大増税政策が失敗であったことを2001年に正式に認めた。首相の地位にあった者が地位を退いたのちに失敗を認めるのは勇気を要することだ。

「過ちて改めざる、是を過ちと謂う。過ちては則ち改むるに憚る勿かれ」だ。

橋本元首相はこの意味で立派だった。小泉元首相、竹中元経財相とはまったく異なる。

国家財政(=一般会計)赤字の具体的数値を紹介する。

大増税を実施した1997年度。

1996年度21.7兆円 の赤字が

1997年度は18.5兆円 に減少。

しかし、

1998年度に34.0兆円、

1999年度に37.5兆円 に激増した。

小泉政権下の2001年度。

2000年度33.0兆円 の赤字が

2001年度当初予算では28.3兆円 に減少したが、

2001年度実績では30.0兆円、

2002年度に35.0兆円、

2003年度に36.3兆円 に急増した。

2001年度の実績値30.0兆円は粉飾されており、

実態の赤字は33.3兆円だった。

小泉政権の公約は2001年度に破綻したが、小泉政権は2001年度の赤字を30兆円に偽装した。

これらの数値は以下の「真実」を意味する。

「財政赤字を縮小させるために実行された緊縮財政政策は、短期的には財政赤字を縮小させたことがあったが、中期的には財政赤字を逆に大幅拡大させた。」

  

「北風と太陽」のイソップ寓話を知る必要がある。

北風と太陽が旅人の外套をはがすことを競った。

旅人の外套をはがそうと冷たい北風を吹きつけるほど、旅人は外套を強く掴み外套ははがれない。

太陽が暖かい光を注ぐと、旅人は自ら外套を外した。

不況の入り口で「北風政策」を強行すると経済は急激に悪化する。税収が大幅に減少し、不況深刻化が景気対策を要請する。結果として財政赤字が大幅に拡大する。

大田弘子経財相の言葉を検討してみる。

「方法は三つしかない。歳出削減、成長力強化による税収増で、足りなければ増税だ」

経済構造は一朝一夕に変わらないから、「成長力強化による税収増」は短期的には実現しない。政府の施策は「歳出削減」と「増税」になる。

内閣府の財政収支試算が悪化したのは、足元で税収が見積もりを下回っているからだ。税収の落ち込みは景気悪化の結果だ。日本経済は本年年初から不況に移行した可能性が高い。

不況初期にある現段階での、財政収支改善を目的とする「歳出削減」と「増税」の実施は、まさに、1997年度、2001年度の政策の繰り返しだ。景気悪化が加速し、財政赤字は間違いなく拡大する。

  

本年3月14日の参議院予算委員会で、国民新党の自見庄三郎議員が大田経財相に財政政策発動の必要性について質問した。この日の質疑の結果、大田弘子経財相と元国際大学学長宍戸駿太郎氏とによる公開討論開催が決定された。8月8日に開催される。

これらの諸点については、「神州の泉」ブログに「日本経済復活の会」会長の小野盛司氏が精力的に論説を寄稿されている。

大田氏は3月14日の答弁で、二つの間違った事実を述べた。

第1は、「経済安定化を目的とする政策として、現在、世界的に金融政策が用いられており、財政政策を活用する考え方は取られていない」と述べたこと。

第2は、「財政政策は立案、決定、実施のタイムラグが大きく、経済状況の変化に対応した機動的実施が困難である」と述べたこと。

大田経財相は、米国のブッシュ政権が1月に減税を中心とする財政政策を策定し、2月に総額1680億ドルの景気対策を議会で成立させ、5月に実施した事実を知らなかったとしか考えられない。

内閣府スタッフは都合の悪い事実を大臣に教えなかったのだろうか。だが、仮にスタッフが教えなくとも、経済財政担当相の地位にある者がかかる基礎知識を持ち合わせていないとすれば、日本経済のかじ取りは恐るべき人物に委ねられていることになる。

    

財務省は超低金利政策を日銀に強要してきた。その大罪について7月21日付記事「「売国政策」を排除しなければならない」に記述した。

2000年以降、日本円は米ドル以外の通貨に対して暴落した。円とともに暴落した米ドルで日本の外貨準備を運用してきたために、日本国民は100兆円の損失を蒙った。

インフレを抑制する金融政策の効果で、円が上昇することは国民の利益に適う。米国は「ドル高は米国の国益」と発言するが、「円高は日本の国益」も「真」である。

「緩やかな金融引締めと緩やかな財政緩和」政策が求められている。経済運営で最も重要なことは、インフレを回避しつつ、日本経済の実力に見合う安定成長を維持することだ。

「バラマキ財政」を実行する必要はない。私が「バラマキ財政」を主張したことは一度もない。財政緩和は非利権型政策で実行すべきである。景気支持と財政健全化の手法については、機会を改めて考察する。

財政赤字は不況期に拡大傾向を示す。好況期には縮小する。不況期に拡大傾向を示す財政赤字を無理に縮小させようと緊縮策を強行すると、財政赤字は拡大する。これがこれまで繰り返した失敗だ。

財務省と小泉政権以来の政権は「北風と太陽」の寓話から「学習」すべきだ。

「現実を直視して、政策を失敗したなら率直に認め、その失敗を教訓として未来に活かす」

政治家が自己に厳しい行動を取るのは、政治家が国民の幸福のために行動するからだ。

過ちを偽装して正当化し、国民の苦しみを平然と見ていられるのは、政治屋が自己の利益のために政治活動をしているからだ。「痛みのある改革」と言うが、正確には「他人に痛みのある改革」だから、平然としていられる。

   

米国議会ライブラリーの礎に「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」の言葉が刻まれているという。

福田政権が三度目の失敗の扉を開きつつある。

財務省が失敗を繰り返すのは、財務省が国民の幸福を考えていないからだ。

国民の幸福を希求しない官僚機構と政権に政策が委ねられれば、国民が不幸になるのは必定だ。

国民の幸福を追求する政権を一刻も早く樹立しなければならない。

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これだけ民意を受けての選挙での民主党の 圧勝の結果について、長年の慣行に慣れ親しんだ 自民党議員も大手マスコミも民意が まったくわかっていないような報道が連日 繰り返されている。 [続きを読む]

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