「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」(1)
不況の入り口に立つ日本経済。福田政権は「歳出削減」と「増税」を検討する。「優柔不断」がもうひとつの特徴だから、総選挙を控え「景気対策」の声にも食指が動く。財務省が主導権を握れば、最悪の経過をたどるリスクが浮上する。
日本の元凶のひとつは財務省にある。財務省が実権を握る「官僚主権構造」が日本を破壊してきた。①弱肉強食の奨励、②官僚利権の死守、③対米隷属の外交、の三大基本政策は財務省によって主導されてきた。
1997年度に橋本政権は財務省主導の経済政策に乗った。バブル崩壊不況をようやく脱出した日本経済は奈落の底に落ちた。金融不安が火を噴いた。1997-1998年に日本経済は金融恐慌の淵をのぞいた。
2001年の自民党総裁選。橋本元首相は「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」の言葉を胸に刻み、自民党総裁選に立候補した。橋本元首相は小泉首相が提唱した超緊縮財政の危険性を訴えたが、小泉氏が当選した。
橋本政権が実行した1997年度大増税を最も強く批判したのは私だった。私は1996年年初から反対論を唱え続けた。橋本元首相は首相を辞されたのち、平成研究会(橋本派)研究会に私を講師として招き、私の考えを傾聴してくれた。
橋本元首相は2001年の自民党総裁選に際して、1997年度大増税政策が誤りであったことを公式に認められた。政治家としての出処進退、責任の明確化において、正義感の強い行動を取られたと思う。
政策最高指揮官であった橋本元首相が政策失敗を正式に認めたにもかかわらず、大蔵省は政策失敗を現在も認めていない。大蔵省内部で、政策失敗を正当化する研究会を創設し、政策失敗を偽装し続けている。
2001年度、小泉首相は史上最強の緊縮財政を実行した。「国債を絶対に30兆円以上発行しない」ことを公約に掲げた。
私は小泉政権の経済政策を政権発足時点から批判し続けた。小泉政権の政策により、日本経済は最悪の状況に向かうと警告した。現実に日本経済は戦後最悪の状況に誘導された。
日本経済は2003年にかけて、崩壊の危機に直面した。最終的に小泉政権は「税金による銀行救済」という金融行政史上最大の汚点を残した。限りなく深い闇に包まれる「りそな銀行救済」が実行された。
詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』を参照いただきたいが、小泉政権の経済政策は完全に破たんした。しかし、小泉政権は責任を取らなかった。このころから、日本の「責任倫理」は崩壊の一途をたどる。
重大な約束を破ったときには、「そんなことは大したことではない」。不正を追及されたら、「人生いろいろ、社長もいろいろ」と開き直る。非戦闘地域はどこかと質問されれば、「そんなこと聞かれたって分かるわけがない。自衛隊がいるところが非戦闘地域だ」の詭弁を押し通す。
2003年のりそな銀行救済は、金融行政の根幹である「自己責任原則」を放棄するものだった。「自己責任原則」とは、「責任ある当事者に応分の責任を負わせる」原則だ。
りそな銀行が破綻すれば、りそな銀行所有者=株主は出資金を失う形で責任を負わなければならない。ところが、小泉政権はりそな銀行に2兆円の公的資金を投入してりそな銀行を救済し、りそな銀行株主に巨大な利益を供与した。
福田政権は、7月22日の経済財政諮問会議で、2011年度までの経済財政に関する内閣府試算を発表した。小泉政権は2006年度に、国・地方合計の基礎的財政収支(=プライマリー・バランス)を黒字化する目標を設定した。
政府は「骨太方針2006」との呼び名を付けたが、牛乳のコマーシャルと勘違いしてしまう。意味不明なネーミングだ。
22日発表の試算値では、2010、2011年度に名目成長率が高まり、かつ、歳出削減が大幅に実行された場合でも、基礎的財政収支が3.9兆円赤字になるとされた。
名目成長率が低く推移し、歳出削減が小幅になる場合には、基礎的財政収支は7.9兆円の赤字になる。
「基礎的財政収支」とは、「税収-公債費を除く歳出」のことだ。公債発行金額と公債費が同額であると、基礎的財政収支が均衡する。政府は財政健全化指標として「基礎的財政収支」を用いている。
元衆議院議員の城内みのる氏が「城内みのる「とことん信念」ブログ」で的確な指摘をされているが、大田弘子経済財政担当相は、内閣府試算値に関して次のように述べた。
「「(基礎的財政収支)黒字化目標は必ず達成する。方法は三つしかない。歳出削減、成長力強化による税収増で足りなければ増税だ」(2008年7月23日付中日新聞)
(以下は「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」(2)に続く)
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