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2008年6月 2日 (月)

当面の内外経済金融情勢

内外の株式市場では本年3月中旬を転換点に、株価上昇が観察されている。NYダウは51日に本年13日以来4か月ぶりに13,000ドル台を回復し、52日に13,058ドルまで上昇した。その後、523日には12,479ドルまで下落して、昨年816日のザラ場安値12,517ドルを下回り、下落トレンドへの移行が警戒された。NYダウが12,500ドルを大幅に下回ると、本年1月と3月の安値によるNYダウのダブルボトム形成の見方に修正を迫られる。

しかし、NYダウは523日以降、上昇に転じて529日には12,646ドルまで反発した。NYダウは12,500ドルが重要な下値抵抗ラインになっており、この水準を下回らずに上昇すれば本年1月、3月の安値での底値形成の可能性が強まることになる。

 

日経平均株価は515日に14,251円まで上昇し、317日の安値11,787円から2464円、20.9%の上昇を示したのちに米国市場に連動して小幅下落した。526日には13,690円まで下落して25日移動平均を下回ったが、その後、反発に転じて14,338円まで上昇し、110日の14,388円以来の高値を記録した。

 

昨年夏以降に内外株式市場で株価が下落した背景に米国のサブプライム金融危機が存在する。サブプライム危機は典型的な不動産金融不況の一類型で、不動産価格下落を出発点として不良債権の増加と経済悪化が相互に作用し合って断ち切りがたい悪循環を形成してきた。問題が進行すると大手金融機関の破たんが表面化して金融システム全体が大きなリスクにさらされることになる。

事態の深刻化を回避するためには悪循環を断ち切る施策が必要で、①マクロ経済政策による景気悪化回避、②金融機関損失の早期開示と自己資本増強、③金融システム危機を回避するための政策当局の明確な決意と行動、が求められる。この問題については531日付記事2003年株価暴落の深層(1)-危機対応の日米較差-」に記述した。

 

サブプライム金融危機に対して米国は迅速かつ効果的な対応を実行してきた。FRBの積極的な金利引き下げ、ブッシュ政権の景気対策決定、金融機関の損失早期開示と自己資本増強、FRBによるベア・スターンズ社買収資金融通など、上記の①~③の施策が次々と実行に移された。その結果、米国金融市場の動揺は最小限にとどめられていると評価できる。

 

原油価格の高騰が続き、米国でインフレ懸念が残存していることがリスクファクターだ。原油価格高騰が持続するとFRBによる金利引き上げを警戒しなければならなくなる。FRBが利上げを決定すれば株式市場には大きなショックが走ると考えられる。原油価格の指標であるWTI522日に1バレル=135ドル台に上昇したのちに小幅下落しているが、先高観測は依然として根強い。

世界の投資資金が原油先物市場に流入していることが原油価格上昇の一因であると指摘されているが、ポールソン米国財務長官は世界的な原油需要増加が価格上昇の主因であるとの見解を示している。原油価格の今後の推移を慎重に見定めることが求められる。

 

原油価格動向と米国金融政策の先行きに不透明感が残存するが、金融危機に対する米国の迅速な対応を背景に、米国株式市場の不安定性が後退し、日本の株式市場の基調が底堅くなってきている点に留意が必要だ。東証第1部上場企業の20093月期予想利益基準の株価収益率(PER)529日終値基準で17.22倍、益利回りは5.80%である。10年国債新発物利回りは1.75%で両者のかい離であるイールドスプレッドは4.05%で、株式の割安感は依然として強い。

 

530日発表の4月鉱工業生産指数は季節調整後前月比0.3%低下して昨年4月以来の低水準を記録したが、5月予測指数は前月比4.7%増加が見込まれており、生産活動が急激に落ち込んでいるわけではない。同日発表の4月全国消費者物価上昇率は生鮮食品を除くベースで前年同月比0.9%上昇したが、3月の1.2%上昇からは低下した。

日本の株式市場での株価上昇局面では、短期間に大幅に株価が上昇することが多い。米国株式市場が堅調を維持する場合、日本の株価が2008年後半にかけて一般的予想を大幅に上回って上昇することも考えられる。日本株式に対する投資が大きなチャンスを迎えている可能性を無視できない。

 

527日発表のS&Pケース・シラー住宅価格指数は、全米主要10都市の1戸建て住宅価格が3月に前年比15.3%下落したことを示した。統計開始以来最大の下落率を更新した。米国の不動産金融不況が最悪期を脱したのかどうかについては慎重な検討が求められるが、金融機関損失に伴う資本増強などの対応が極めて迅速であることは重要なポイントであると考えられる。

 

為替市場においては、一般的に米ドルが下落傾向にあると理解されているが、昨年半ば以降、米ドルの中期的トレンドに変化が観察されている点に注視が必要だ。米ドルは2001年以降、日本円を除く主要通貨に対して趨勢的な下落傾向を示してきた。しかし、昨年11月以降に英ポンド、加ドル、本年4月以降にユーロに対して小幅反発を示している。

原油価格高騰に連動して資源国通貨の豪ドルは、対米ドルで24年ぶりの高値水準で推移しているが、全体として米ドルの下落傾向が弱まっていることには留意が必要である。日本円も本年3月には127ヵ月ぶりの円高水準を記録したが、日本の利上げ可能性が消滅し、米国の利下げが中断する見通しが強まるなかで、その後は米ドルが小幅反発している。円高・ドル安傾向持続見通しの見直しが求められる。

 

債券市場では、米国長期金利の上昇に連動して日本の長期金利が大幅に上昇した。新発10年国債利回りは529日に約10ヵ月ぶりに1.8%台に上昇した。3月から5月末までの長期金利上昇幅は0.6%ポイントで、この期間の米国長期金利上昇幅をやや上回っている。

一般に株価最下落地点が長期金利の最低地点と重なる。セオリー通りの市場変動が生じているが、日本の債券市場では相場の転換点で債券価格の大きな変動が観察されることが多い。長期金利大幅上昇のリスクが存在するから、債券投資家には十分な注意が求められる。

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