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2008年6月 3日 (火)

「敵を欺くにはまず味方を欺く」手法に警戒すべし

テレビ番組は最も効率の良い世論操作のツールである。全国ネット放送の視聴率1%は約100万人の国民が情報を受け取ることを意味するといわれている。1000人の聴衆を集めた演説を1000回行って達成される情報伝達がテレビ番組を使えば1%の視聴率で達成されてしまう。20%となれば2000万人だ。その効果は想像を絶する。テレビ番組は世論操作の最重要ツールである。

 

小泉政権はテレビ、新聞、スポーツ紙、週刊誌、デジタルメディアのあらゆるメディアを世論操作に総動員し始めた政権と伝えられている。その後の政権も基本的にその手法を継承している。

テレビ、新聞の日本の主要メディアは政治権力によるメディア・コントロールの主翼を担う存在である。本来メディアは社会の木鐸として政治権力と距離を保ち、独自の視点から現状を批判的に検証し、国民に伝達する役割を担うべきものだった。しかし、現実のマスメディアは権力機関の一端としての役割を積極的に担う存在に堕してしまっている。

権力に対峙し、権力の不正を糾弾する真のジャーナリストはブラウン管から完全に排除されつつある。多くの言論人が経済的・社会的動機から率先して権力の走狗になり下がっている。政治権力は権力の走狗を自認する言論人を重用し、マスメディアにその起用を働きかける。

 

NHKもその財務基盤を政治権力に握られているために、例外ではなくなっている。真実を洞察できるごく少数の国民はメディア・コントロールの実情をおぼろげながらも認識しているが、偏向した情報を一方的に受け取り続けるうちに、正常な感覚を失ってしまいがちになる。一種の洗脳状況が生まれてしまう。

 

フジテレビ月曜9時ドラマ「CHANGE」が政治的背景を背負って放送されているとの指摘がある。読者1万2000人を超すメールマガジンである、まぐまぐ大賞政治部門第1位の「国際評論家小野寺光一の「政治経済の真実」」は、このドラマについても示唆に富む論評を多く公表している。

小野寺氏は、このドラマの第1回放送での、阿部寛扮する199勝1敗の選挙プランナー韮澤勝利が主演の木村拓哉扮する朝倉啓太(第3話で総理大臣に就任)に叫ぶ、

 

「いいか 選挙は日本でできる唯一の戦争だ」

  

の台詞が小泉元首相の元秘書官である飯島勲氏の著書「代議士秘書-永田町、笑っちゃうけどホントの話」(講談社文庫)第二章78ページからの小章「選挙は日本でできる唯一の戦争だ」末尾(82ページ)にある、
  

教訓「選挙とは武器を使用しない、日本でできる唯一の戦争なり。

敵をあざむくにはまず見方をあざむく。これ権謀術数の第一歩と心得よ」

  

とピタリと符合すると指摘している。

  

このドラマはドラマとしては極めて異例の5月12日にスタートしたが、ドラマのクライマックスを現実の政治日程に重ね合わせるための日程設定とも考えられる。小泉元首相、小池百合子氏、中川秀直氏などが小泉チルドレンを糾合して新派閥ないし新党を結成する可能性も否定できない。この流れの延長上に自民党総裁交代を実現させて、総選挙に向かう戦術が検討され始めているとも考えられる。

  

 昨日6月2日放送の第4話では、首相に就任したばかりの朝倉啓太首相がダム建設に伴うクラゲ大量発生による漁業被害に関する行政訴訟について、「いちいち全部謝罪して補償していればこの国は破産する」との反対論を押し切って、国に非があるなら補償するのは当然だとの理由から、「国は控訴しないことに決めた」と述べ、漁業補償を実行するストーリーが展開された。ドラマのなかでの内閣支持率は一段と上昇した。

  

 小泉政権が発足した直後の2001年5月23日、ハンセン氏病国家賠償訴訟について小泉首相は控訴断念の決定を示した。ドラマがこの事例を下敷きにしていることは明白である。小泉政権はこの問題で控訴断念したが、その後は障害者に多大な困難を強いる「障害者自立支援法」を障害者が命懸けで反対運動を展開したにもかかわらず成立させ、高齢者医療を実質的に切り捨てる「後期高齢者医療制度」を導入する法律を強行採決で成立させている。ハンセン氏病訴訟での控訴断念決定は当然だが、小泉政権の決定が支持率上昇を目的としていた疑いは濃厚だ。

  

上記著書のなかの言葉、

「敵をあざむくにはまず見方をあざむく。これ権謀術数の第一歩と心得よ」

に注目しなければならない。

  

現在、政治の舞台で論議の対象になっている「国家公務員制度改革」と「増税問題」。国家公務員制度改革基本法が成立する見通しになったことを、政府は強くアピールしている。しかし、その内容は評価できるものでない。政権支援番組と化しているテレビ朝日「サンデープロジェクト」は、渡辺喜美行革担当相をスタジオに招き、政府決定を絶賛するが、法律は極めて中途半端なものである。

  

 私は10年来、公務員の天下り制度根絶を主張してきた。1999年に上梓した拙著『日本の総決算』(講談社)でも、第5章「官僚主権構造」、第7章「平成ニューディール」に、第1種国家公務員制度の廃止と天下り禁止についての主張を詳述した。公務員に終身雇用を保証した上での天下り禁止の主張を『現代日本経済政策論』(岩波書店)、『ウエクサレポート』(市井文学)にも示してきた。

日本の最大の構造問題が、財務省を中核とする「官僚主権構造」にあることを私は訴え続けてきた。「官僚主権構造」の問題は、①官僚機構が意思決定の実権を握っている、と同時に、②官僚機構が国民の幸福を追求せずに、自己の利益増大を追求していること、③政治がこの現状を「改革」しようとせずに「温存」していること、である。

 

成立しようとしている新しい国家公務員制度は真に問題を解決するものでない。能力・実績主義が用いられるといっても、採用枠の区分、省庁別の採用は残存する。キャリアでない職員からの幹部登用が行われるにしても、それは例外的な運用にすぎない。

各省庁による天下りあっせんを禁止して、内閣府人事局が官僚の再就職を一元管理することになっても、その人事局に各省庁から人員が送り込まれ、実質的にこれまで同様の天下りを実現することができる。これまで存在した2年間の再就職禁止規定が取り除かれれば、天下り制度は逆に制度的に補強されることになる。

 

小泉政権以来の常套手段は、与党内に反対論を存在させ、政府決定がその反対を押し切って決定されたように装うことである。政権が与党内の強い反対を押し切って新制度を導入したとの演出を凝らす。政府御用の報道番組はその装いの上に「報道」の装飾をさらに重ね合わせる。

 

自民党内でこれから「財政再建派=増税派」VS「上げ潮派=歳出削減派」の対立が演出されることになる。「上げ潮派」は消費税の増税よりも歳出削減、「小さな政府」を主張し、財務省とも対立する素振りを示すと考えられる。

財政再建派は社会保障制度の安定性確保のための消費税増税を主張する。だが、総選挙を控えて与党が増税方針を最終的に決定する可能性はゼロである。最後は「歳出削減派」が勝利する。小泉元首相と中川秀直氏を中心とする新しい政治勢力が自民党を最終的に代表することになるだろう。麻生氏が担がれる可能性もある。同時に自民党は選挙に不利な増税も真剣に論じる政党であることをアピールする。

 

すべては、総選挙での政権交代を回避するための戦術である。「上げ潮派=歳出削減派」は財務省と対峙する素振りを示すが、裏では確実に繋がっていると考えられる。歳出削減派の主張する「小さな政府」は「弱者を切り捨てる小さな政府」であって、「官僚利権を根絶する小さな政府」ではない。その明白な根拠は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫の制度改革に際して、「天下り禁止」が盛り込まれなかったことだ。私はこの問題が最も分かりやすいリトマス試験紙であると主張し続けた。

 

「上げ潮派」の主張する経済成長による財政収支改善と政府の無駄排除は私の持論である。この考え方を取り入れたことは評価できるが、本当に官僚利権を排除するのかどうかは疑わしい。

日銀人事で福田政権が最後まで財務省からの天下り維持に執着したことも、この実態を象徴している。今国会での日銀副総裁人事決定が見送られる可能性が高まっているが、日銀法には国会閉会中には内閣が日銀人事を決定できるとの規定があり、財務省利権を死守しようとする福田政権が、国会閉会中に国民の意思に反する人事を決定する暴挙に出るリスクがないとは言い切れない。

 

日本社会は権謀術数に依存する政治権力とそのメディア・コントロールによって破壊され尽くされようとしている。国家公務員制度改革を形にし、歳出削減を重視する装いをまとう政治主張に、多くの国民が欺かれてしまう危険が充満している。表層に見られる細かな事象から政治権力の権謀術数を洞察し、メディアが伝えない真相、深層を、一人でも多くの心ある国民に伝えなければならないと思う。

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