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2008年6月 7日 (土)

NY株価急落と当面の内外経済金融情勢

 66日のNY株式市場で株価が急落した。NYダウは前日比394ドル下落し、12,209ドルに達した。詳細な分析は『金利・為替・株価特報200867日号』に記述したので、レポート読者はこちらを参照いただきたいが、NYダウは20072月以来の大きな下げ幅を記録した。

  

  

 本ブログ62日付記事「当面の内外経済金融情勢」に記述したように、NYダウは12,500ドルラインでの攻防を続けていた。NYダウは本年310日に11,740ドルまで下落したのち反発に転じて51日に13日以来4か月ぶりに13,000ドル台を回復し、52日には13,058ドルまで上昇した。

  

 その後は12,700ドルから13,000ドルのレンジを中心にもみ合いで推移したが、520日以降に再び下落基調を強めて523日には12,479ドルまで下落していったん12,500ドルを下回った。しかし、その後反発に転じて、529日には12,646ドルまで反発した。

  

  

 62日付記事にも記したように、NY株式市場の最大のリスクファクターは原油価格の高騰である。原油価格の代表的指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)522日に1バレル=135ドル台の史上最高値を記録した。NYダウは原油価格急騰を背景に523日にかけて下落した。

  

 しかし、その後原油先物取引市場での相場操縦疑惑などが浮上して、WTI価格はいったん1バレル=121ドル台にまで下落した。原油価格下落を大きな背景にしてNYダウは529日に12,646ドルまで反発した。

  

  

 ところがその後、NYダウは530日から64日まで4営業日連続で下落し、64日には12,390ドルまで下落した。MBIAやアムバックなどの「モノライン」と呼ばれる金融保証会社の格付けが引き下げられるとの憶測や大手証券リーマン・ブラザーズの資金繰り悪化懸念が伝えられたことなどが株価下落の要因になった。

  

 だが、65日には米国小売業大手の4月の売上高が前年比3%増加したことなどが明らかになって、NYダウは前日比214ドル上昇して12,604ドルまで反発した。しかし、66日に394ドル下落して12,209ドルに下落した。

  

  

 66日の株価急落は原油価格急騰と同日発表の5月雇用統計が米国経済の悪化を鮮明に印象付けたことによって生じた。66日、米国大手証券のモルガン・スタンレーは原油価格が74日までに1バレル=150ドルまで上昇するとのレポートを発表した。レポートに反応する形で原油価格は急騰し、一時1バレル=139ドル台をつけ、1バレル=138ドル台で取引を終えた。前日比上昇幅は10ドルを超え、原油価格は史上最高値を更新した。

  

 また、5月雇用統計では非農業部門の雇用者が前月比4.9万人減少して5ヵ月連続の雇用者減少を記録した。また、失業率は4月の5.0%から一気に0.5%ポイント上昇して5.5%にまで達した。株式市場は景気悪化とインフレの同時進行という「スタグフレーション」のリスクを感じ取り、株価急落で反応したのである。

  

  

 62日付記事でも記述したように、NYダウが12,500ドルを大幅に下回ると、本年1月と3月の安値でのダブルボトム形成によるNY株価底入れ仮説が大きく揺らいでしまう。NYダウは昨年109日の14,164ドルから本年310日の11,740ドルまで、2424ドル、17.1%下落した。この株価下落を株価下落第1波動とし、52日の13,058ドルを起点に株価下落第2波動が始動しているとの見方も浮上してくる。

  

 52日の13,058ドルを起点に2424ドル下落すると、NYダウは10,634ドルまで下落してしまうことになる。66日にNYダウが12,209ドルまで下落してこれまでの攻防ラインであった12,500ドルを大幅に下回ったことで、当面、NY株価の下落圧力に十分な警戒を払わなければならない状況が生じている。

  

  

 焦点は原油価格の推移とFRB(連邦準備制度理事会)の政策対応だ。FRBのバーナンキ議長は、63日の講演で利下げ政策の中断を示唆するとともにインフレおよびドル下落に対する強い警戒感を表明した。FRBは本年1月以降に利下げ政策を急激に強化したが、3月中旬のベア・スターンズ社危機を収拾したことで、緊急避難的な対応策にひとつのけじめをつける局面を迎えたと判断していると考えられる。

  

 米国格付け大手のS&P62日にモルガン・スタンレー、メリル・リンチ、リーマン・ブラザーズの大手証券3社、65日にMBIAとアムバックのモノライン大手2社の格付けを引き下げるなど、サブプライム問題に関連した金融機関の格付け引き下げや大手金融機関の追加損失拡大などの問題は今後も残存すると考えられ、FRBの政策姿勢は極めて慎重だと予想される。しかし、FRBが金融危機回避からインフレ懸念払拭に軸足を移し始めていることは間違いないと考えられる。

  

  

 問題は原油価格の急騰がいつまで、どの水準まで持続するのかだ。原油価格の騰勢が続く間はFRBのインフレ警戒姿勢は強まりこそすれ、弱まることは考えられない。NY株式市場は金融引き締め警戒感から株価下落の反応を示す可能性が高い。

  

 サブプライム金融危機を契機とする資産価格下落-金融不安拡大-景気悪化の悪循環が米国経済金融市場に残存しており、そのなかでのインフレ懸念拡大は株式市場にとっての大きな重しになる。

  

  

 日本企業の株価は日経平均株価が317日に11,787円の安値を記録して以降、堅調に推移してきた。日経平均株価は66日には14,489円まで上昇して、19日の14,599円以来の高値を記録した。年初来高値は14日の14,609円で、あと120円の水準にまで株価は反発した。

  

 66日のNY市場で株価が急落したことを受けて、週明けの東京市場では株価が急落すると予想されるが、昨年79日から本年317日にかけての株価下落が大幅で、日本の株価が絶対水準として大幅に割安な水準にあると判断されることから、317日の安値を下回るような株価急落は想定し難い。

  

 詳しい分析は『金利・為替・株価特報200866日号』に譲るが、日本の株価変動が米国の株価変動に強く連動していることは明らかであり、当面は米国経済、金融政策と米国金融市場の推移を注目しなければならない。

  

  

 ECB(欧州中央銀行)は65日に2008年、2009年の経済、物価改定見通しを公表し、同日ECBトリシェ総裁が記者会見した。一方、530日発表の5月のユーロ圏15ヵ国消費者物価指数上昇率は3.6%4月から0.3%ポイント上昇して、本年3月に並んで史上最高値を記録した。

  

 ECBが発表した2008年の消費者物価上昇率見通し予測中間値は3月段階の2.9%から0.5%ポイントも上方修正されて3.4%に改定された。ECBのインフレ率目標値は「2%未満」である。物価の現状および見通しは目標値を大幅に上回っており、ECBも物価警戒姿勢を強めている。

  

  

 ECBのトリシェ総裁は65日の記者会見で、「次回会合で小幅利上げを実施する可能性を排除しない」と述べた。ECBの次回金融政策決定会合は73日に開催される。トリシェ総裁のECB追加利上げに関する言及は単なる言葉の上での牽制ではないと判断される。

  

  

 日本銀行総裁に白川方明氏が就任して約2ヵ月が経過した。白川氏は新総裁としての職務を着実にこなし、無難なスタートを切った。金融政策、金融システム両面の理論、実務に明るく、日銀総裁としての要件を十分に満たしている。記者会見でも自分の言葉で政策決定の背景を詳しく説明することができ、日銀総裁の本来あるべき姿が示されている。

  

 中央銀行総裁会議でも他国の中央銀行幹部と十分に討議することが可能であり、望ましい人事が実現したと評価できる。今後の課題は米欧がインフレ警戒で足並みをそろえるときに、日本銀行が適時適切な対応を示せるかどうかだ。

  

 日本国内には日銀の金利引き上げ政策を極度に嫌う政治勢力が存在している。日本の行き過ぎた金融緩和政策が円安を生み、日本経済のプレゼンスを低下させていることにも留意しなければならない。政治に対する今後の白川総裁の金融政策についての説明ぶりが注目される。

  

 

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