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2008年6月21日 (土)

政治の対立軸(2)三つのトピックス

政治の対立軸として私は三つの問題が重要だと述べてきた。第一は市場原理と弱者保護についての考え方。「市場原理至上主義」対「弱者保護重視」と置き換えてもよい。第二は官僚利権に対する考え方。「官僚利権温存」対「官僚利権根絶」と捉えられる問題だ。第三は外交の基本姿勢。「対米隷属外交」対「独立自尊外交」と置き換えることができる。

  

この問題に関連して、三つのトピックスが提供されている。①日本の自殺者が10年連続で3万人を超えたニュース、②グリーンピースが告発した鯨肉横領問題が不起訴処分になったこと、③拉致問題の解決なく経済制裁解除に動き始めた福田政権、の三つだ。

  

  

以下は自殺者3万人超についての朝日新聞記事(2008年6月19日12時10分)である。

  

 昨年1年間に全国で自殺した人が前年比2.9%増の3万3093人で、統計が残る78年以降では03年に次いで過去2番目に多かったことが19日、警察庁のまとめでわかった。60歳以上の高齢者や、働き盛りの30歳代がいずれも過去最多だった。自殺者が3万人を上回ったのは98年以降10年連続。

 原因・動機については、自殺対策に役立てるため、今回のまとめから52分類に細分化。三つまで複数選択できるようにした。原因・動機を特定できた2万3209人では、健康問題が1万4684人で最も多く、経済・生活問題が7318人、家庭問題が3751人、勤務問題が2207人と続いた。

 健康問題の内訳では、うつ病が6060人で最多。このうち30歳代が996人、40歳代が940人で、50歳代以上だけでなく、子育て世代にも広がっている。職業別では、被雇用者・勤め人が1341人、自営業・家族従事者が371人だった。

 勤務問題の内訳=図=では、多い順に「仕事疲れ」が672人、「職場の人間関係」が514人で、いずれも30歳代が3割弱を占めて最多だった。「仕事疲れ」の8割以上がサラリーマンなど被雇用者・勤め人だった。

 都道府県別では東京3047人(前年比382人増)、大阪2241人(同289人増)、神奈川1845人(同206人増)など大都市圏での増加が目立った。10万人当たりの自殺者数では山梨(39人)が全国で最悪だった。また、いじめが動機の自殺は14人だった。

 男女別では、男性が2万3478人、女性が9615人でいずれも前年より2.9%増えた。

 年代別では、60歳以上が1万2107人(前年比8.9%増)で2年連続で増えた。前年を上回ったのは、40歳代の5096人(同1.8%増)、30歳代の4767人(同6.0%増)だった。

 

  

 自殺者が3万人を突破したのは1998年だった。97年の2万4391人から3万2863人へと8000人以上も急増した。1998年は97年の9兆円国民負担増加政策により、株価暴落、経済崩壊がひろがり、長銀や日債銀の破たんが広がるなど、日本経済が激しい混乱に陥った年だった。

  

 自殺者がピークを記録した2003年は、小泉政権が景気悪化推進政策を実行し、株価が暴落、金融恐慌の現実が日本経済に差し迫った年だった。 

  

小泉政権が「自己責任原則」という金融行政の根本原則を放棄して「税金によるりそな銀行救済」を実行したことによって金融恐慌は回避され、その後、株価上昇と日本経済回復が実現したが、自殺者は減少せずに現在に至っている。

  

  

 政府は自殺の原因として「うつ病」を強調している。「うつ病」を中心とする現代日本での「心の問題」は重要だが、諸外国と比較しても突出している日本の自殺の背景に、経済社会の荒廃、市場原理至上主義が横たわっていることを忘れてならないと思う。

  

 自殺の背景として最も多いのが「健康問題」、第2位が「経済・生活問題」だ。しかし、健康問題の裏側に経済問題が潜んでいることを見落としてはならない。

  

  

 後期高齢者医療制度問題は高齢者の医療費負担、保険料負担がいかに深刻であるのかを明らかにしている。経済的な不安と健康不安とは表裏一体をなしていることが圧倒的に多い。

  

  

 労働市場の構造変化も激しい。1985年に12%だった非正規雇用者の比率は30%台に急上昇している。15-25歳の労働者では非正規雇用者が2分の1を占めている。

 労働コストの削減を優先する企業は人件費のかさむ中高年労働者をターゲットに人員削減にいそしんでいる。雇用・生活に対する不安、職場での心理的圧迫が心の変調をもたらしていることも多い。

  

 経済が浮上してくれば、国民生活は楽になりそうなものだが、小泉政権が推進してきた「市場原理至上主義」の下で、景気回復下にもかかわらす格差が拡大し、固定化される傾向が強まっている。大企業の利益は史上最高を更新しているが、一般労働者、経済的弱者、社会的弱者は景気回復から完全に取り残されている。

  

  

 「日銀短観」という調査が3ヵ月に1度発表されている。次回は7月1日に発表されるが、この調査には企業の規模、業種別に業況判断が示される。大企業の業況は好景気を示しているが、中小企業の大半は不況のただなかで推移したままである。地方の街角景気を代表するのが、「小売」、「飲食・宿泊」、「建設」の3業種だが、この3業種は日本経済がいざなぎ景気を超す景気拡大期間の下で一度も浮上しなかった。

  

  

 年金、医療費などの国民負担は増加の一途をたどり、高齢者の負担についての将来の姿がまったく見えない。高齢者が安心して、生きがいを持って生きてゆける社会を構築しなければならないのに、現実は明らかに逆方向を示している。

  

  

 市場原理至上主義に反対する具体的な政策提言として、私は労働市場の改革、教育に対する助成、弱者保護のセーフティーネット強化を唱えている。同一労働・同一賃金制度の導入、初等教育の充実、高等教育を受ける機会の保証、社会的、経済的弱者の適正な保護策を今後も訴えてゆきたい。

 

  

 グリーンピース関係者が逮捕され、世論がグリーンピース・バッシングに誘導されているが、財政資金が投入されている機関の不透明な実態の全容を解明することの必要性はまったく減じていない。

  

 「カナダde日本語」の美爾依さんが、私の記事を紹介くださるとともに、この問題について貴重な見解を示されている。私は重要な告発は適正な手順を踏んで行われるべきだと考えるが、国民の税金が100億円も投入されてきた調査捕鯨事業に不透明な点が存在することは重大な問題だと考える。

  

 検察は刑事告発を受けたが不起訴処分を決定したとのことだが、十分に適正な捜査が行われたとは考えられない。政治権力が司法、警察、裁判所を支配する現代日本は極めて危険な状態にあると言わざるを得ない。

  

   

 私が「天下り根絶」を唱えるのは、私が大蔵省で勤務した2年間の体感に基づく。官僚は国民の幸福を目指して行動していない。官僚はそれぞれの官庁の利害に沿って動いている。実際のエピソードは『知られざる真実-勾留地にて-』(イプシロン出版企画)に記したが、この問題を解決しない限り、国民本位の良い社会を構築することは不可能だと考える。

  

 各種世論調査は、「政府の無駄を排除したうえでの国民負担増大であれば受け入れる」との考えを持つ国民が過半数を超えていることを示している。国民が安心して暮らせる社会保障制度を支えるのにお金が必要なことは誰もが知っている。本当に必要な負担であれば、国民は負担に応じるのだ。

  

 しかし、国民に負担増大を求める前に公的部門の無駄、適正でない利権を排除すべきであるのは当然だ。政府関係機関や金融機関に、永年一生懸命汗を流して働いてきた人がいる。ところが、所管官庁の役人経験者がある日突然やってきて、トップに居座る。役所がこれらの機関に恩恵を与え、これらの機関は見返りに幹部ポストを差し出しているのだ。

  

  

虎ノ門に集中する公益法人は、多くが単なる天下り組織である。政府は天下り機関と随意契約を結び、巨額の財政資金を投入し、多数の天下り役人が法外な報酬を得ている。

 天下り利権が官僚利権の中核であり、その根絶を成し遂げるのが本来の「改革」の目標である。郵政事業を民営化して、銀行業界と米国資本の要望を満たすことが改革ではない。

  

 

 福田政権は北朝鮮が拉致被害者についての再調査を開始すると表明したことを受けて、北朝鮮に対する経済制裁を一部解除する方針を示した。その背後に、米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の意向が存在することは明白だ。

 

 グリーンピース関係者を逮捕までする日本政府が、拉致問題の全面解決を棚ざらしにしたまま、経済政策解除に動くのは、日本の「対米隷属」を象徴する以外の何者でもない。

  

 イラクが大量破壊兵器を保持していると米国が言えば、十分な裏付けを取ることもなく同調して対イラク戦争を支持する。拉致問題の解決なくして経済制裁解除なしと国民に約束しておきながら、米国が対北朝鮮宥和策に動くと正当な根拠なく追従する。

  

 日本は正義と公正の視点に立って、自らの主張を国際社会に発信するべきである。そして、日本政府は日本国民の幸福を追求する存在でなければならない。米国が日本にとって重要な国であることを否定する者は少ない。米国との関係を重視することを私は間違っていると思わない。しかし、米国を重視することと米国に隷属することはまったく違う。

   

  

 官僚も政治家も自己の利害得失を優先しすぎている。公務員は国民への奉仕者であるし、政治家は有権者の幸福を第一に考えるべき存在だ。また、メディアは、社会の木鐸として権力と距離を保たなければならない存在だ。それぞれが、本来の役割に立ち帰ることが求められている。

  

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